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2012年01月01日 08:55
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2012年韓半島周辺の動きは?(上)

 2012年は韓国だけでなく周辺国でも首脳交代が予想され、北韓では金正日が死んだ。それらが韓半島と韓国に及ぼす影響は何か。各国の専門家に、当該国の変化と韓半島への影響を分析してもらった。

米-北に平和と非核化を要求 対北政策は強硬に

 1994年の金日成死去時、米国はクリントン政権だった。当時クリントン大統領は弔電を送ったが、今回の金正日死去にあたって米国国務省は、次の3つに言及しただけだった。
 (1)困難に瀕している北韓住民に対する関心、(2)新しい指導者が世界平和に寄与することへの希望、(3)核ミサイル開発の放棄と、国際規約などを守る転換点になることへの注文だ。この3点を守ってこそ、人権状況の改善と平和、繁栄、安全、権威が保障されるということだ。
 金正日の死亡発表以後も食糧支援や6カ国協議への復帰に言及するなど、金正恩との接触を続ける姿勢を示した。ワシントンは「やることはすべてやった。ボールは北にある」と考えているのだ。オバマ政権が北韓に求めているのは、核とミサイルの放棄、東北アジアの安定と平和のための国際的協調と協約の遵守、住民の人権状況の改善だけだ。
金暎勲(キムヨンフン) 40年ソウル生まれ。延世大学院修了後、米アジア平和安全会議議長など経て現在本紙論説委員。
 一方、大統領選で再選を目指すオバマ大統領の道のりは平坦ではない。選挙公約を守っていない上、米経済は欧州危機による混乱と世界経済の成長鈍化といったリスクに直面しており、野党共和党の猛烈な攻撃が予想されるためだ。
 上下両院で多数派が異なるねじれ状態で、議会の政策決定機能が停滞。失業者問題や社会保障改革に改善はみられず、国民は大きく失望している。経済危機により国際社会での影響力が大幅に低下したのも重要な問題だ。
 米大統領選の共和党候補者指名争いでトップに立っているのはギングリッチ元下院議長だ。1月13日に「党員集会・予備選」の火ぶたを切る中西部アイオワ州の党員集会で40%以上の支持を確保すれば、共和党の大統領候補になる可能性は十分にある。
 2位のロン・ポール下院議員は自由主義思考方式を持つ保守主義者として「米国第一」という基本公約を掲げる。経済、社会保障、国防、労働者権利、教育問題などあらゆる政策で保守的な価値観を追求しつつ、改革を訴えている。
 中道派のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は多額の資金を投入して組織的な選挙運動を展開し、一定の支持を得ている。ただ、モルモン教徒である彼にとって宗教の壁は高く、支持は盤石ではない。
  一方、次期大統領選に臨む共和党候補の発言からは、北の変化を望んでいることが強く窺える。特に核とミサイル開発の放棄は米国が北韓を評価する上での重要な項目になる。
 どの候補も概して当面の危機は去ったと見ているものの、細かな部分では若干の違いがある。
 ギングリッチ氏は北韓がより危険な方向に進む危険性を指摘。ロムニー氏は、金正日が進めてきた核とミサイル開発および密貿易の基盤は残っていることを挙げ、韓日への危険も去っていないと述べた。一方ポール氏は、指導者の行動いかんでは外国に駐留する米軍を引き揚げることにまで言及した。
 一方、2012年の米大統領選挙と上下両院議員選挙の結果にかかわらず、韓半島、とりわけ対北問題は一層強硬な政策が実現される可能性が高い。
 共和党政権であれ民主党政権であれ、北韓に核とミサイル放棄と平和体制への転換を求めていくのは間違いない。米国は当面、相手の出方を見つつ慎重かつしたたかに対応していくだろう。

露-ロシアは半島への関与強化へ エネルギー、鉄道、軍事で接近

 ロシア大統領選は2012年3月4日に実施され、プーチン首相の大統領復帰が有力だ。12月4日の下院選での与党敗北にみられるように、プーチン政治はすでにピークを過ぎたが、受け皿がない以上、当分はプーチン体制が続きそうだ。
 プーチン外交の特色は資源重視の地政学外交にあり、今後アジア太平洋外交を強化しよう。朝鮮半島への関与政策も強めるとみられる。
 金正日労働党総書記の突然の死はロシアにも衝撃を与えたが、それは金総書記が昨年8月、9年ぶりに訪露し、関係が拡大しつつある矢先だったためだ。ロシア側は、後継政権が新たな関係強化の機運を継承することを望んでいる。
 ロシアはアジアへのエネルギー輸出などアジア太平洋外交を強化しており、来年9月にウラジオストクでアジア太平洋経済協力会議(APEC)を初めて主催する。一方の北朝鮮は、2012年の「強盛大国」入りを控え、各国から経済支援を求めている。
名越健郎(なごしけんろう) 53年岡山県生まれ。東京外語大卒。時事通信外信部長などを経て、現在拓殖大学客員教授。
 8月の金総書記訪露は、中国一辺倒外交を修正する狙いもあったようだ。
 首脳会談では、北朝鮮を通過して韓国に向かう天然ガスパイプライン計画が議題となり、韓国を含めた作業部会の設置で合意。金総書記は敷設計画にお墨付きを与えた。完成後、北朝鮮は毎年ガス通過料1億ドルを手にすることが、計画を動かしたようだ。
 プーチン氏はエネルギーを国策利用することで知られ、この大型プロジェクトをてこに朝鮮半島進出を図りそうだ。
 ロシアは朝鮮半島の鉄道利権も狙っている。シベリア鉄道と南北縦貫鉄道を連結させたい意向で、3国間協議も開かれている。来年は北朝鮮の羅津まで鉄道を近代化させる方針だ。
 秘密警察出身のプーチン氏は軍や情報機関を権力基盤にしており、「暴力装置」を通じた朝露関係も緊密化するだろう。2011年8月、ロシアのシデンコ東部戦略司令部司令官が訪朝し、2012年に初の朝露合同軍事演習を実施することで一致した。
 故金総書記は8月の訪露で、シベリア鉄道沿線の軍需工場を訪問。代表団には金英春人民武力相や軍需産業担当幹部が多数同行していた。兵器老朽化の著しい北朝鮮がロシア製兵器の導入を狙っているのは間違いない。北朝鮮には購入する外貨がないが、石油価格高騰で財政が健全化したロシアが、北朝鮮に新型兵器や部品を安値で提供するかどうかが焦点。
 ロシアは朝鮮半島問題に関与することで、アジア太平洋でのプレゼンス拡大も狙っている。中国と同様、6カ国協議の再開を支持しており、協議で仲介的役割を果たしたいようだ。
 ロシアは6カ国協議の安全保障部会議長のポストを掌握しており、6カ国協議をゆくゆくはアジアの安保問題を討議する協議機関に発展させることを狙っている。
 プーチン氏はエネルギーと安保をてこに、朝鮮半島を含むアジア太平洋への進出を試みるだろう。

2012-01-01 13面
 
2012年韓半島周辺の動きは?(下)
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