ログイン 新規登録
最終更新日: 2019-02-14 00:00:00
Untitled Document
ホーム > アーカイブ > 小説
2010年03月23日 09:36
文字サイズ 記事をメールする 印刷 ニューススクラップ
 
 
序曲(67) 金鶴泳

 洋子のアパートは、保谷駅の南口から西の方向に五分ほど歩いたところにあった。入口の横に、「緑荘」と書かれた看板が掲げられていた。
 祥一の住んでいるアパートと同じく、一階と二階が四部屋ずつになっているが、祥一のアパートが古びた簡易アパートなのに対し、緑荘は鉄筋コンクリート造りの、頑丈で真新しい建物である。入口の横に二階に通ずる階段があるが、それも幅のゆったりした鉄製の階段である。
 洋子は階段を昇って行った。昇り切ったところが、これも幅のゆったりしたコンクリートの廊下になっていて、洋子の部屋は、西はずれの一つ手前の六号室だった。
「ずいぶんいいアパートじゃないか」
 ドアのノッブに鍵を差し込んでいる洋子に祥一はいった。
「一年前に建てられたばかりなのよ。わたしが入居したのは、建てられてすぐのときだったわ」
 部屋は、六畳の和室一間と、リノリウム敷きの四畳半ほどのダイニングキッチンが付いている。和室には、祥一の部屋のよりいいベッドが備えられている。しかも、祥一のアパートは共同トイレなのに、洋子の部屋にはトイレが付いている。小さな冷蔵庫もある。洗湯は、歩いて二、三分のところにあると洋子はいった。
 狭苦しいなんてもんじゃない。二十(はたち)前の女が一人で住むにはぜいたくな気がした。
「ぼくのところにくらべると、よっぽどいい部屋じゃないか」
 狭苦しいというから、四畳半一間程度の部屋を彼は予想していた。アパートも、もっと古びたものを予想していた。


「会社がまとめて借りているアパートなものだから、住んでいる人は、N化粧品の社員なの。もっとも、ほかの人たちは、皆渋谷の本社の方に勤めているけれど」
 ダイニングキッチンには、小さなテーブルも据えられていた。
「ぜいたくな部屋だね」
 と祥一はいった。
「でも、部屋代の半分は、会社で持ってくれているのよ」
「君の会社は、そんなに儲かっているのかね」
 N化粧品会社は、中堅どころの会社である。
 狭苦しい部屋とは、こういう部屋のことか。すると、俺の部屋は、古びた超狭(ちょうぜま)の部屋ということになるな--と彼は内心苦笑をおぼえた。
「そういうことは、よくわからないけれど、営業成績はいいようね」
 洋子はカーテンを開け、ガスストーブに火をつけた。
 窓の向こうに点々と家が建っていて、数十メートル先が線路になっている。ちょうどそこを電車が通りがかっていて、車輪の音が響いてくる。
 騒音といったらそれぐらいのもので、車の通るような道も周囲にはなく、あたりはひっそりしている。線路の向こう側には畑が茫々とひろがっている。けやきの林もあちこちに見えた。
「ここだって、ずいぶん静かじゃないか」
 祥一はいった。
「でも、あの電車の音が気になるの。夜は特にそうだわ」
 洋子は冷蔵庫を開けた。
 祥一は洋子に近づいて行った。その腕を掴み、和室のベッドに引いて行った。

1984年9月21日4面

1984-09-21 4面
뉴스스크랩하기
小説セクション一覧へ
文政権の「脱原発」は、韓国の核能力抹...
韓米同盟の廃棄か 文政権の打倒か
四面楚歌の文在寅青瓦台
ひんしゅく買う与党議員らによる「積弊」問題
次期大統領候補が相次いで拘束
ブログ記事
韓国の太極旗部隊のソウル都心進軍(「韓米同盟守護」、「文在寅を断頭台へ」などを叫ぶ光景)
セヌリ党が都泰佑代表体制に
反日種族主義を打破しよう
『韓国壊乱』のあとがき
「国連軍司令部」強化動向
自由統一
北韓 金英哲訪米 韓米間に大きな溝
国連で北韓人権決議案採択 
金正恩の年内訪韓困難
北、非核化どころか戦争準備
「板門店宣言」英文版を変更


Copyright ⓒ OneKorea Daily News All rights reserved ONEKOREANEWS.net
会社概要 会社沿革 会員規約 お問合せ お知らせ

当社は特定宗教団体とは一切関係ありません