10月26日のソウル市長選挙は、韓国政治の状況をうかがえる機会だった。選挙関連の各種統計データは、国民世論の流れを把握することができる指標だ。そのうち4つの指標を分析してみる。(ソウル=李民晧)
若い世代の朴元淳支持 25区中21区で朴候補勝利
会社員が押し上げた投票率「仮想大統領選」にも関心
世代別の得票率
今回の市長選で際立ったのが、20~40代の朴元淳支持だ。放送3社の出口調査の結果を見ると、この世代における朴元淳候補と羅卿〓候補の支持は約7対3に割れた。投票率が高かった今回のような選挙では、概して若い有権者の参加が多くなる。これが保守派の敗北につながった。
特に40代の朴元淳支持は際立っていた。調査によると40代の66・8%が朴候補に投票。羅候補は32・9%だった。
40代は昨年6月2日の統一地方選挙の時、野党民主党候補に54・2%、与党ハンナラ党候補に39・8%を投じた。年代別に見て当時と最大の変化を見せたのが40代だった。
40代の票は伝統的に、保守と左派でほぼ半々になる傾向があった。やや感情的になりがちな20~30代とは違い、社会の現実を冷静に見ることができ、生活も安定しはじめる年代という点が作用するためだ。
今の40代には主体思想派の影響を受けた386世代が多いといわれるが、最近行われたある世論調査では、真逆の結果が出ている。金正日に対する好感度を聞いたところ、40代の「悪い」と「嫌いだ」という回答はそれぞれ77%と76%だった。これは同じ質問に対する50~60代の63%と75%、20代の74%と67%より高い数字だ。
今回保守系のハンナラ党が敗れたのは、理念的な要素以上に生活への不満が表れたという分析を裏付ける傾向といえよう。
投票率
最終投票率48・6%。平日に行われた選挙の投票率としてはかなり高かった。
臨時祝日になった昨年6月2日の統一地方選挙当日、ソウル市長選の投票率は53・9%だった。昨年7月28日(水)のソウル恩坪乙国会議員補欠選挙の投票率は40・5%だった。休日に行われた選挙よりは5・3ポイント低かったが、選挙組織が総動員される国会議員選挙より8・1ポイント高い投票率を示したのだ。
時間帯別に見ると、退勤時間以後の午後6時から8時の投票締め切りまでの2時間で投票率は8・7ポイント上昇。会社員の有権者が積極的に投票所に向かったことになる。
出勤時間帯の投票率も高かった。今回の選挙で、午前11時までの投票率は19・4%。歴代のソウル市長選と比べ、同時間帯での投票率は過去最高だった。
区ごとの勝敗
ソウル25区のうち、ハンナラ党の羅卿瑗候補がリードしたのは江南、瑞草、松坡、龍山区のわずか4区。羅候補は地盤である中区でも敗れている。この結果が来年4月に行われる国会議員選挙にそのまま反映されると仮定すると、与党には無惨なシナリオが待っている。
現在ソウル地域の国会議員数は48人。そのうちハンナラ党所属議員は36人だ。江南3区の6人と龍山区の1人の計7人を除く29人は、来年の選挙で苦杯をなめることになるかもしれない。
得票率は、当選した朴元淳候補が羅候補に7ポイント差をつけたが、全体的な状況を総合して見れば朴候補の圧勝といえる内容だった。朴候補の最大の支持勢力は、自称市民運動を展開している「左派活動家」らだ。人口1000万の首都ソウルは、左派の影響力の下に入っていったという分析も可能なのだ。
朴槿惠VS安哲秀
次期大統領選挙に与党候補として出馬濃厚な朴槿惠ハンナラ党元代表と、野党系候補として出馬がうわさされる安哲秀ソウル大融合科学技術大学院院長の仮想対決にも注目が集まった。10月26日のソウル市長選挙当日、テレビ局3社が有権者2159人を対象に行った出口調査の結果、朴元代表が38・0%を得て37・8%の安院長をわずかに上回った。
この調査の誤差は±3ポイント。両者の差は0・2ポイントで誤差の範囲内に入るため、どちらが優勢かは判断できないといえる。
しかし、既成の政治圏に属する公党の候補が無所属の一個人と同水準の支持率にしかならないという事実は、政治に対する高い不信感を浮き彫りにする結果といえよう。 |