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2017年05月31日 00:00
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【対談】現代の民族的人材の育成とは

 今年で創立72年目に入った白頭学院(大阪市)。韓国系の一条校として着実に歩みを重ね、このたび市内にある大阪偕星学園高等学校とも提携した。グローバル化が叫ばれて久しい現在に求められる民族教育とは何か。白頭学院建国学校の高敬弼理事長と、民団大阪本部の金明弘副団長(文教担当)が対談した。なお、金副団長は、関西を中心に220の学習塾を展開する「成学社」の経営者で、偕星学園では理事長を務めている。(大阪=韓登)

ルーツを認識してこそ―白頭学院建国学校 高敬弼理事長

グローバル教育の一部―民団大阪本部 金明弘副団長

 ――グローバル時代の人材には、どのような資質が求められるのか。
高敬弼(以下、高) 自分のルーツ、あるいは歴史認識を正しく持たないと、ビジネスの場でも、教育の場でも、話の第一歩がなかなか始まらない。自分のルーツや歴史を学ぶなかで、その知識や体験がどこまで発揮できるかが、重要かつ基本になると思う。
――建国学校出身者には、世界を相手にビジネスをしている人もかなりいるようだが。
高 私たちが思っている以上に、国際化は進んでいる。私は韓国のパスポートを持ち、貿易の仕事をしているが、自分の国やルーツを語れないと、会話が弾まない。建国学校は日本の一条校だから、基本的には日本の歴史や文化を学ぶが、一方で韓国の歴史や文化も学んでいる。さらに、ディベート力や創造力を養う教育に重点を置いているから、グローバル人材を養成していく上で、極めて適切な学校だと自負している。
金明弘(以下、金) これからの課題は、格差に負けず、自分の能力を伸ばして、社会で活躍できる力を養うことだと思っている。前理事長の金聖大先生は、韓国の大学校理事長らの前で、貧しくて大学へ行けそうになかったのに、当時の李慶泰校長の個人指導を直接受け、大学へ進学できたと、感謝の思いを込めて語った。金先生は涙ぐんでいた。金先生の涙を見たのはそれが初めてだった。建国学校は、ドラマになる教育や生徒をたくさん生んできたということだ。
高敬弼理事長

――民族的人材とは、どのような人材か。
金 一つのモデルになるのが、神戸にある中華同文学校だ。同校には、日本人の志望者も多い。中国語が学べるからだ。同文学校は中学までしかないから、進学希望者は日本の学校に進学するしかない。同文学校の生徒のための進学ルートが確保されているようで、進学面においても有利だと評価されている。
――入試制度が変わるが。
金 偏差値教育に拘泥すると、必要な人材が育たないと指摘されている。必要なことは、「人間力」の養成であり、そのためにも自分の頭で考えたことを、英語で表現する力が大切だ。日本のこれまでの教育では、英語の読み書きはできるが、会話はできない。これからは、それでは通用しない。2020年からの英語の入試は、4技能のうち、自分の考えを文や言葉で表すスピーキング力が重視される。建国は、人間力を鍛えてきた。20年以降の変革を先取りした教育といっていい。
高 グローバル教育という面からみれば、韓国の歴史を学ぶことだけでも、その一環といえる。閉ざされた歴史ではなくて、切り開くための歴史として理解する必要がある。グローバル社会にあっては、学歴が重視されるのではなく、この人は何を経験し、何ができ、どういう絵が描けるのかという能力が求められていると思う。
金 韓半島は四つの大国に囲まれている。中国、ロシア、日本、そしてアメリカだ。大国に囲まれている小国が、一つの民族、一つの言語を維持していくためには、どれだけ歴史的な苦労、叡知が必要であったか。韓民族は、マイノリティーの痛みを知っており、覇権主義に陥らず、平等に物事を考えられる資質と叡智を備えている。
高 韓国系の学校は世界に32校ある。建国、金剛、京都国際を含め、この32校には、自分の国を離れて生活している子女が通っている。彼らは、国際的な役割を担う存在だ。さらなるグローバル化に備え、国、あるいは諸団体の教育関係の予算を充実させていく必要があろうかと思う。教育で後れをとると、社会で後れをとることになる。
金 大阪府は高校授業料を無償化し、私学の経営環境は非常によくなった。ただ、建国学校の幼稚園から中学校は、公立ではないので、対象にはならない。無償化されれば、生徒も集まりやすくなるだろう。
高 私たちも無償化を目指して、理事会で検討していきたい。国家は、国防、経済、教育の三大要素で形成されるという。教育のための予算も潤沢であるべきだ。日本政府にしても、韓国政府にしても、後方支援を願うばかりだ。後方支援があれば、優秀な人材が育っていくだろうし、門戸も広げられると思う。また、人材育成に拍車がかかると思うし、韓日友好親善の促進にも寄与すると信じている。

建国と偕星学園の提携 部活や進学で相乗効果に期待

 ――建国高校と大阪偕星学園高校との提携で、どのような相乗効果が期待されるのか。
高 金理事長は、学習塾を大きく発展させた方だ。教育に関するアドバイスを受け、ともに発展できる方法があるのではないかと思い、提携を提案したところ、快諾してくれた。偕星学園は(在日韓国人が多く住む)生野区にあり、金明弘理事長が民団大阪本部の副団長ということもあり、話は進めやすかった。偕星学園では、韓民族のための教育は行っていないが、スポーツ交流を含む協力や、教職員のレベルアップなどの効果を大いに期待している。
金 教育を通じて、韓国と日本の友好親善に寄与するばかりでなく、国際親善に寄与するということは当然のことだ。智辯学園和歌山高校などは長年、韓国へ修学旅行に行って、隣国間親善の大切さを生徒に教えており、そのようなことがいま高く評価されている。教育を通じて交流を深めていくことが大切だ。
――偕星学園は海外の学校とも提携を結んでいるとか。
金 韓国、台湾、ニュージーランドなどの学校と教育提携を結んでいる。英語や韓国語などの外国語を学ぼうという意欲を育てていけたらいいと思っている。建国高校との提携についてはたいへんうれしく思っており、高理事長に感謝している。偕星には野球部があるが、建国にはない。一方、建国の吹奏楽部は好成績を挙げている。また甲子園に出ることがあれば、建国の吹奏楽部の力を借りたいと考えている。偕星はこの3年間で大学合格率は3倍になり、生徒数も大きく伸びた。スポーツ交流のみならず、進学の面でも、互いに知恵と工夫を出し合って、合格率を高めていくよう努力したい。私は学習塾の業界で40年間生きてきたので、ノウハウには自信がある。やるべきことをやれば、必ず力がついてくる。スポーツでも学業でも、私たちなりのアドバンテージがあるので、建国の発展のためにあますことなく提供していく所存だ。
高 よく誤解されるのは、建国学校が民族教育だけをする学校だと思われていること。確かに韓国学校であり、しっかりと民族教育を行うが、それだけではない。朝鮮学校は一条校ではなく、独自の教育課程で政府(北朝鮮)に奉仕する立場にあるが、私たちとはスタンスが全く違う。その点だけは明確に理解してほしい。私たちは、日本に在住し、骨を埋めるという気持ちで、誇りをもって堂々と生き、本国(韓国)に帰っても、言葉を短期間でマスターできる教育をしている。

幼少期に始める外国語学習 民族教育の新たな地平開く

 ――グローバル人材の育成教育をより効果的に進めていくために、韓国あるいは海外とどのような提携をしているのか。
高 建国学校は、フィリピンに英語教育を中心とする提携校がある。今後は中国語にも力を入れていく流れになるだろう。海外留学してきた生徒らは、世界が見えてくる。世界を見ていない人は、話す言葉も感覚もずいぶん違うと感じる。
金明弘副団長
 金 日本の文科省は、学生の「内向き」現象を非常に心配している。アメリカの有名大学を見てみると、日本人留学生の比率がどんどん減っている。フィリピンのセブ島にある英語学校の大半は、韓国人経営だ。家族でひと夏、セブ島で暮らしながら英語を勉強する人たちもいる。関連会社でセブ島に学校を作り、英語を学べる機会を増やしていこうと考えている。カナダ、ニュージーランドにも1年間の留学のコースがあるが、セブ島はかなり割安だ。
高 成学社(金明弘氏経営の学習塾)の35周年の席でプレゼンテーションがあり、セブ島での留学案内があった。非常に安全で、安価で、語学研修が堪能できそうなコースなので、これはすばらしい留学体験ができると予感し、校長を通じて前向きに検討するように指示した。日本は非常に裕福で、ものであふれかえっている国だが、世界にはいろいろな国がある。それを見聞きするということだけでも大きな勉強になるし、その国の人と話をするだけでも、大きな収穫になる。
――外国語を学んでよかったという生徒の話は。
高 建国学校ではいま、幼稚園から英語を教えている。幼少期に簡単な挨拶や歌を英語でできるようになると、それを見た親や祖父母が褒めてくれる。そうすると本人は英語をもっと勉強しようという気持ちになる。韓国語や日本語の場合も同様だ。
金 同感だ。一番大きな課題は、世界共通語ともいえる英語で、自分の考えを相手と交わす能力を、高校の3年間である程度身につけていくことだ。テストの点数だけではない。そのためには、力のある教員の確保などが当面の課題となる。韓国語の場合も同じだ。建国で学んだ生徒は基本的な会話ができる。それ以上学びたい人のためには留学ルートもある。
――民団組織としてはどのような支援策が考えられるのか。
金 阪神教育闘争を経験した先人の努力もあって、金容海先生が初めて北鶴橋小学校の民族教師となるなど、民族学級の制度保障が進み、学校教育の一環として言葉や文化について教えてきた。しかし、いまや在日同胞優先のマイノリティー教育は限界にきているのではないかと行政側から指摘されつつある。中国の人もいる、ベトナムの人もいる、タイからきた人もいるという時代なのだから。小学生のうちに民族の言葉や歴史を習い、交流を通じて、在日コリアンとして生きていける、あるいは生きたいという感情を抱く生徒を、建国学校などにつないでいくことが重要になってくるだろう。
高 幼少教育が非常に重要であることは承知している。幼少期の印象は成人しても残っているから、その頃に悪い印象を受けると、非常に大きな損失になりかねない。建国学校は現在、「プロジェクト500」という生徒数を500人にする運動をしているが、これは単に生徒を集めるということではない。地方に行くと、民族教育を受ける場所がないとよく言われるので、教育の場を提供させていただくということでもある。下宿先も用意するし、そのうち自前の寄宿舎も建設する用意があると、父兄には説明している。

在日韓国人社会が作った大阪の「チャータースクール」

  ――グローバル教育と民族教育は相反する理念だという人もいるようだが。
1946年3月設立の建国工業学校・同高等女学校が前身。現在は幼稚園から高校まである。大阪市住吉区遠里小野2-3-13に所在

金 そうは思わない。民族教育は、グローバル教育の一部分だ。たとえば、韓国に暮らす人は、民族教育という言葉すら分からないと思う。しかし生まれた時から日本語の環境の中で育ち、韓国語を学び歴史を知るということは、広くグローバル教育の一端になるという認識でとらえていい。そのうえで、次はほかの言葉を学びたい、文化を知りたいという広がりを見せていく。民族教育と国際教育は決して矛盾したり、相反する関係にあるとは思っていない。
高 建国学校の場合、日本と韓国の歴史をその国の教科書によって習うわけだが、判断するのは生徒自身だ。それが、非常にいいところだと思っている。歴史観は国によって異なるが、分からなければほかの人に聞くなりして、結果的に生徒自身が判断する。自分の国の歴史やルーツが分からないと、やはりマイナスだ。民族教育は、普遍的な人間教育の一つだと認識している。
金 アメリカではチャータースクール、つまり公設民営化された学校が3000校ある。地域の教育は上から与えられるものではなくて、その地域の人たちが自分たちの権利として、自主的に行うことが制度保障されている。教育の一元化は非常に危険。多元化、多様化が重要だ。建国学校は在日同胞社会が作りあげた民営の学校だ。和して同ぜず。この伝統は非常に重要だ。
高 建国学校は、今年で創立72年目に入った。その間の民団組織の財政支援などに深く感謝している。建国学校のみならず、金剛学園や京都国際学校でも、全国の同胞が民族教育を受けられる環境が整備されている。ぜひ子女を送っていただけるよう願っている。
金 昨年他界された金容海先生は、たいへん功績の大きな方だった。私が還暦を過ぎた頃に金先生の自宅に招かれ、「これからの民団は教育の仕事を放棄してしまったら、何も残らない。民団活動の中心となるのが民族教育の継続と発展だ。君はもう若くないのだから、これからは、その活動を担ってくれ」と言われた。私は金先生の遺言を守る形で、民団大阪本部の文教担当の副団長に就任し、民族教育を担当することになった。在日同胞子女が民族教育を受けられるように守り、民団組織を通じて支援していきたいと思う。

2017-05-31 3面
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