北韓は12日、潜水艦発射ミサイル(SLBM)「北極星‐1」を改良した弾道ミサイル「北極星‐2」を試験発射した。ミサイルは平安北道・亀城から発射され、約500キロ離れた東海(日本海)に落ちた。固体燃料の北極星‐2は発射徴候の事前探知が難しく、韓国はこれを迎撃する防御手段を持っていない。地上からこれを迎撃できるTHAADの配備は必須になった。 日米首脳会談に合わせ 発射は、米フロリダで日米首脳会談が行われていた時間帯を狙って行われた。トランプ大統領と安倍首相が金正恩の脅威に対して言及した直後でもあった。 朝鮮中央通信は13日、新型の地対地戦略弾道ミサイル「北極星‐2」の発射が成功したこと、金正恩がそれを視察していたことなどを伝えた。北極星‐2は昨年8月、発射に成功した潜水艦発射ミサイル「北極星‐1」を地上発射型として開発したものと見られ、固体燃料で、軌道式の移動発射台から発射された。 平壌の媒体は、新しい戦略ミサイルには核弾頭を搭載でき、飛行距離を短かくするため高角で発射されたと報道した。そして、金正恩が、北の戦略武器である弾道弾が液体燃料から固体燃料のエンジンに転換されたことと、亡父・金正日の誕生日(16日)の「贈り物」と言ったことを伝えた。 韓米連合司令部は北側の発表が出るまで、北極星‐2の正体把握に混乱したようだ。韓国軍合同参謀本部と外交部は平壌側を厳しく糾弾・警告する声明を発表した。 日米首脳は発射直後の共同で声明を発表し、安倍晋三首相は「断じて容認できない。国連制裁決議違反だ」などと警告。また、韓日米3国は北側の挑発について協議するため、国連安保理の招集を要請した。 仮に、今回発射されたIRBM(中距離弾道ミサイル)が高角度で発射されれば、マッハ9以上の速度で落ちてくる弾頭を迎撃できる防御手段を韓国は持っていない。これほど弾頭ミサイルを迎撃できる地上配備の防御手段はTHAADだけだ。日本は海に展開している海上自衛隊のイージス艦からのSM‐3ミサイルで迎撃が可能だ。 ところが中国当局は13日、北側のミサイル実験は遺憾だが、THAAD配備とは別問題だと強弁した。韓国は金正恩の核ミサイル挑発から国民を守るためTHAADの増強配備を急がねばならなくなった。 中国と北韓のミサイル共助 トランプ政権が発足してから、北側のICBMへの根本対策、つまり先制攻撃論までワシントンで取りざたされる中、金正恩が韓米同盟に挑んできた。 北側が獲得したSLBM技術を地上発射型に適用した「北極星‐2」は、米国に届くICBM技術を発展させると同時に、韓国軍のキル・チェーンの無力化を狙ったものだ。 北側が「北極星‐1」を地上発射型として開発した理由は、潜水艦発射ミサイル(SLBM)の開発に成功したのに、それを運用できる潜水艦の建造・確保が難しいためだ。つまり、潜水艦発射ミサイルを地上で運用する戦略に出たのだ。 北側のSLBM開発は、中国を模倣しているといわれる。「北極星-1」は中国が1980年代に開発した巨浪(JL‐1)と瓜二つで、中国がこのSLBMを地上発射型に運用した過程まで似ている。中国は北側に移動式発射台(TEL)まで提供してきた。 韓米連合軍にとって深刻なのは、北側が弾道ミサイルを固体燃料のエンジンに全面的に転換することだ。固体燃料の弾道弾は事前に発射の兆候を把握し難く、移動式の発射台を使えば、発射前の無力化(破壊)が困難であるためだ。 北側が固体燃料とその技術を獲得したのはイランとの協力によるものと専門家たちは指摘する。つまり、中・北・イランのネットワークがあったのだ。 北側の「北極星」などの実戦配備によって、韓国内のTHAAD配備は当初の予定より増強するのが不可避になった。北側の行動は、中国の韓国への圧力を妨害する結果となる。 だが、中国にとって北側の行動は負担になるばかりではない。西太平洋の米軍に対する中国の作戦で、北と共同作戦を展開できる側面もあるからだ。韓日米にとっても新しい課題だ。 |