北韓が国連制裁を受ける前月、大量の航空機用燃料を中国から輸入していたことが、韓国貿易協会の統計から明らかになった。航空機用燃料は、国連安保理決議2270により、北韓への提供が禁じられている。2月は、制裁の内容をめぐって大詰めの交渉が繰り広げられていた時期で、北はその間に、禁輸項目となった物資を手に入れていた。北は何らかの情報を得て、燃料を事前に買い込んでいた可能性がある。
韓国貿易協会によると、2月の中朝貿易額は、3億2000万ドルに上った。輸出入額はほぼ同額の1億6000万ドルずつだが、前年同月と比べて輸出が2・4%の増加だったのに対し、輸入は6・9%伸びた。
中朝貿易は昨今低迷している。中国からの対北原油輸出は、ほとんど止まったままだ。2月の統計でも、記録上はゼロとなった。
その一方で伸びたのが、航空機用の燃料だ。2月の輸入量は約215トン。1月(36トン)に比べて約6倍になった。国連安保理決議では北韓への航空機用燃料の輸出が禁じられた。それを見越していたかのような輸入急増だ。
国連安保理の制裁決議は、3月2日に採択された。北韓が行った1月の核実験を受けて内容の検討が始まったが、2月に長距離弾道ミサイルの発射実験が行われたことから、より厳しい内容にすべく、協議が長引いていた。核実験から57日後の採択は、過去に採択された対北制裁で最長だった。北韓はその間に制裁の内容を入手して対応した可能性もある。
制裁の内容が公になったのは2月25日。米国が決議案を提出した際だ。しかし、その前に米中の協議が行われており、中国が北に情報を漏らした可能性がある。
ただ、北韓の燃料輸入は、月によって大きなばらつきがあるのも事実だ。昨年は最大で約400トン。一方で最少は1トン未満だ。今年2月の215トンは、際立って多いとはいえない。
品目別に見ても、航空機燃料の全体に占める割合は多くない。額にして10万ドルだ。目立ったのは化学肥料で、1800万ドルにのぼった。前年同月比で約6倍となっている。
だが北から中国への輸出に目を向けると、同じく制裁で輸出が禁じられた石炭(無煙炭)の輸出が、全体の最多になっている。額にして6800万ドル。だが、前年同月比で14%ほど減少している。
輸出した品目の中で増加が際立ったのは衣類で、前年比約1・6倍の6400万ドルと、石炭に迫っている。ただし、衣類は輸出禁止品目には含まれていない。
石炭は北韓の主要品目だ。2月までは中国向けに輸出があったが、制裁案の採択後はストップしているようだ。
朝日新聞の報道によると、北韓からの石炭の主要搬入港となっている遼寧省営口では、北韓船舶の入港が全面禁止とされているという。中国は今のところ国連制裁を履行しているとみられている。
対する北韓は、中国に対して反発を強めているようだ。一部報道では、労働党中央本部が中国の制裁履行を「敵対視策動」と見なして、党員に闘争を指示したという。
北韓の制裁前の航空機用燃料の輸入増加と、制裁後の中国の制裁履行。硬軟織り交ぜながら北韓との関係をマネージメントしている中国の姿が透けて見える。 |