李春根
地球上のどの国も今よりもっと強力で豊かになる夢を持つ。ところが、強大国は弱小国とは違って国力の単純な増加でなく世界1の強大国、覇権国になることを夢見る。世界1の国の持つ利益と名誉が分かるからだ。今日の国際政治で覇権国になりたいという夢を最も露骨に表している国は中国だ。中国はすでに「和平崛起」と「韜光養晦」、すなわち平和的に立ち上がり、意図を隠して時を待つという国家戦略を天下に闡明した公式的な覇権挑戦者だ。
20世紀以降覇権国の地位に就いている米国は、今日の中国とは全く違って覇権国になるという具体的な国家戦略を有していなかった国だ。米国はむしろ覇権国の地位を躊躇った。米国は、覇権国は利益と名誉はあるが担当せねばならない重い責任が伴うという事実が分かっていたのだ。覇権国は世界秩序を維持し経済発展の責任を負う義務がある。国々の集まりである国際社会で小さな国々の争いを中止させられるだけでなく、事前にこれを防げる警察にならねばならず、小さな国々の経済発展のため援助したり、市場を開放したりもしなければならない。さらに小さな国々の独裁政治に介入、世界市民の自由と人権を保障することも覇権国がやらねばならない見えない責任だ。
覇権国が自分の強大な地位を利用して世界を搾取し、自分の利益ばかりを求める国になれない理由は、そうすることはまさに自分が立っている基盤そのものを壊すことになるためだ。それで、覇権国は世界を率いて行くためにすべての国々が信じ従える旗を掲げる国であるべきで、追従する者らに恩を施せる能力、逆らう者らを叱れる能力を持ち合わせている国でなければならない。
21世紀に70億の地球人皆が同意し従うイデオロギーがある。マイケル・メンデルバウム(Michael Mandelbaum)教授は、それを「自由(freedom)、民主(democracy)、平和(peace)」と要約する。この三つの旗じるしを掲げてこれを守護すると約束した国、そういう意志と能力を備えた国のみが21世紀の世界の覇権国になれる。中国が米国の代わって21世紀の覇権国になりたいなら、中国は何よりまず地球人全体が同意する自由、民主、平和を守護し増進させる国になると宣言し、これを行動を以って証明して見せねばならない。
しかし、中国は最近世界の覇権国どころか、地域強大国の地位にさえ恥ずかしい行動をしている。黙って餓死するより命をかけて脱出する方がましだという切迫した心情で死線を越えた北韓住民たちを逮捕して再び死地に送り返す国が、どうして大国であり得るし、21世紀の世界の覇権国になるのを夢見られるのか? 飢え死にする訳にはいかないため国を離れた同胞たちを見て、自分の無能を恥じるべき北韓指導層は、傲慢にも脱北同胞を「3代を滅すべき祖国を裏切った者」と宣言した。脱北者たちの北への送還はそのまま死を意味するほどの凄絶な状況に変わったのだ。(*左写真は、河を渡る途中北側警備兵に射殺された脱北者)
中国が北韓政権の肩を持つため脱北難民を送還するなら、中国は覇権国どころか現在享受している地域強大国の地位すら恥じるべき国になる。人類愛の本質に逆行する国は強大国にも覇権国にもなれない。まさに只今、中国は覇権国の原初的な資格を有しているのかを世界の人々に証明できる機会だ。
この文は2012年2月29日付国民日報のグローバルフォーカス欄に掲載された寄稿文です。
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