グリーンランドを巡る米国と欧州(EU)の対立が、貿易戦争の域を超え「資本戦争」へと発展する兆しを見せている。ドナルド・トランプ米国大統領がグリーンランド編入を主張し、関税カードまで持ち出したことで、欧州側が貿易面での対抗措置にとどまらず、米国の資産を梃子に圧力を強める可能性が取り沙汰されている。
最近の米国市場では株式・国債・ドルが同時に下落する「トリプル安」が観測され、市場の緊張感が一気に高まった。対外依存度の高い韓国にとって、この衝撃が為替、金利、資金調達コストといった金融不安として急速に波及するとの懸念が強まっている。
デンマーク1億ドル売却は序章にすぎず
今回の局面で注目を集めたのは、デンマーク年金基金による「米国債全量売却」の決定だ。
デンマークの年金基金アカデミカーペンション(AkademikerPension)は、保有している米国債1億ドルを今月末までにすべて処分すると明らかにした。
金額だけを見れば、1億ドルは市場全体からすれば微々たる規模にすぎない。しかし、この動きが欧州発のポートフォリオ再編の序章となる可能性がある点で、市場の注目を集めている。欧州各国が保有する巨額資本が「セル・アメリカ」に加われば、その波及力は決して小さくないからだ。明確な対抗手段に乏しい欧州諸国が、米国への現実的な圧力カードとして金融資産を活用するしかない、との分析も出ている。
EU5カ国、米国債1兆7328億ドル保有
米財務省の「主要海外米国債保有国」統計によると、2025年11月末時点でEU加盟国のうち上位5カ国が保有する米国債残高は1兆7328億ドルに達する。内訳は、ベルギーが4810億ドルで最多、続いてルクセンブルク(4256億ドル)、フランス(3761億ドル)、アイルランド(3403億ドル)、ドイツ(1098億ドル)の順となっている。
欧州諸国が保有する米国金融資産は、株式まで含めれば規模はさらに膨らむ。米財務省のベンチマーク調査によれば、24年6月時点で欧州諸国の米国証券保有額は13兆9000億ドルに上る。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は「欧州が保有する米国債は、グリーンランドを巡る対立局面において欧州側の『非軍事的防衛手段』になり得る」と分析した。実際、市場でも「欧州は貿易面での対抗措置に加え、金融面から米国に圧力をかける余地がある」との見方が広がっている。
セル・アメリカ、韓国市場に直撃
EUによる米国資産売却が現実化した場合、韓国金融市場は大きな衝撃を受ける可能性が高い。まず想定されるのは、ウォン・ドル為替の上昇(ウォン安)、すなわちウォン価値の下落だ。
政府は、国民年金と締結している650億ドル規模の為替スワップを市場安定策と位置づけている。ただし、これを実際に行使することは、国民資産を用いて為替を防衛する行為にほかならず、最終的な損失は韓国自身が負うことになるとの批判も根強い。
為替不安はそのまま金利上昇につながる。米国債金利が上昇すれば、韓国の国債金利も連動し、企業と家計の利子負担は拡大する。株式市場も例外ではない。リスク回避心理が強まれば、外国人投資家が韓国市場から資金を引き揚げる「セル・コリア」が進み、リスク加算金利(リスクプレミアム)が一段と上昇する恐れがある。
また、米国金利の上昇は、韓国企業のドル資金調達負担を重くする。ウォン安は発行金利だけでなく為替ヘッジコストも押し上げ、実体投資の停滞を招く恐れがある。最近、銀行を中心に外貨債発行が増えているのも、対外的な危機に備えた先行的な資金確保と解釈されている。
最終的な焦点は、欧州のセル・アメリカが単なる象徴的圧力にとどまるのか、それとも実行段階に移るのかのいずれかになるかとみられる。
後者となれば、韓国は為替・金利の上昇、外貨流動性の逼迫、企業の資金調達市場の硬直化など、多方面で危機に直面することになる。
短期的な為替防衛策にとどまらず、シナリオ別の対応策を緻密に準備すべき局面に入ったと言える。
 | | | 23日(現地時間)、米ホワイトハウスのインスタグラムに投稿された画像。トランプ大統領が、星条旗を掲げたペンギンと並んでグリーンランドの雪原を歩く様子が描かれている
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