1979年10月26日、軍事クーデターで政権を掌握し強大な権勢を振るった朴正煕大統領が暗殺された衝撃的な事件は、今なお記憶に新しい。その後の追加報道によって、暗殺を主導したのが腹心の金載圭・中央情報部部長であり、暗殺現場が大統領専用とされる宴席で、さらに女性歌手らが同席していたことに驚かされた。韓国はその後、同年の12・12軍事クーデター、80年の光州事件へと激動の時代を迎える。
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』は、この10・26大統領暗殺から12・12軍事クーデターという韓国現代史の中でも大きな事件に巻き込まれた3人の男を、一部フィクションを交じえて史実に基づき描いた作品だ。
韓国史上最悪の裁判とも言われる大統領暗殺裁判を、弁護する者、裁かれる者、裏で操る者、それぞれの視点でドラマチックに作り上げたのは、チュ・チャンミン監督。当時を生きた人々の声にならない悲痛な叫びを描き出している。
映画オリジナルのキャラクターで、勝つためには手段を選ばない主人公の弁護士チョン・インフ役にドラマ「賢い医師生活」のチョ・ジョンソク。そのチョン・インフが弁護を担当する愚直な軍人パク・テジュ役には本作が遺作となったイ・ソンギュン。そして裁判を裏で操る合同捜査団長チョン・サンドゥをユ・ジェミョンが好演、第61回百想芸術大賞映画部門助演男優賞を受賞した。
数々の史実に基づいたフィクション映画の傑作を生み出してきた韓国。本作では、これまで描かれなかった政治裁判の裏側を明かす。
当時行われた裁判は、何度も密かに法廷へメモが届けられ「メモ裁判」と呼ばれるほど、不当なものだった。また、パク・テジュのモデルとなったパク・フンジュ大佐の裁判は、被告人の中で唯一の軍人であったため単審制が適用され、最初の公判からわずか16日後に最終判決が下され「性急裁判」と呼ばれている。
同事件をめぐっては、これまでも『ユゴ 大統領有故』『KCIA 南山の部長たち』などが作られている。両作品とも暗殺事件の背景に何があったのかを、フィクションを織り交ぜて描き高い評価を得た。本作を通して、韓国現代史を揺るがせた事件の背景に迫った。
公開=8月22日(金)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
公式HP=daitoryoansatsusaiban-movie.jp/
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