今年も気づけば年の瀬である。年齢を重ねるごとに一年があっという間に過ぎるというが、そのせいだけではあるまい。いつまでも寒くならない風が、師走に入った実感を抱かせないのではないか▼とはいえ新聞としては一年を振り返る時期である。「激動の一年」「先の見えない世界」などメディアの常套句でまとめてみたいものだが、韓日関係に限れば凱風快晴、南風のように温かかったのではないか。数年前までが嵐のように荒れていたので、その反動か▼この南風をもたらしたのは、明らかに韓国で起きた政権交代である。文在寅氏から尹錫悦氏へと大統領が代わり、対日政策は180度転換した。この変化を日本側は見越していたのか、尹大統領のラブコールに躊躇なく応じたように見える▼今年は尹大統領の就任2年目を迎え、韓日関係ではさび付いていた歯車に油がなじみ、スムーズに回り始めた一年といえる。だが油をさし続ける人がいなくなれば、両国関係は再びきしむだろう▼韓国で来年4月に行われる総選挙で野党が国会の過半数を維持すれば、尹政権の推進力は削がれることになる。岸田自民党とて、先行きは明るくない。現状を見れば、岸田氏が首相の椅子に座っている時間は残りわずかだと言えるだろう▼来年は米国の大統領選挙もある。誰が次期大統領になるかわからないが、ウクライナやパレスチナ問題があり、極東に向けられる関心は相対的に弱まるだろう。やはり来年も「先の見えない世界」になるとしか言えないのである。 |