韓国から北韓に送金された北韓出版映像著作権料の実態が、具体的な数値として明らかになった。野党「国民の力」の曺明姫議員が入手した資料によると、著作権料の名目で韓国から北韓に送られた金額は概算で約8億ウォンに達していた。さらに、対北制裁で送金が制限されたことによって裁判所に供託した著作権料は約21億ウォンに上ることが確認された。(ソウル=李民晧)
「南北経済文化協力財団」 の実態
北韓に対し著作権料の送金を主導した団体は「南北経済文化協力財団(以下、南北財団)」だ。同団体の理事長は、文在寅政権で初代大統領秘書室長を務めた任鍾晳・青瓦台外交安保特別補佐官だ。任氏は2004年1月、南北韓の民間交流協力を名目に、南北財団を設立した。任氏のほか、南北財団の設立メンバーには民主党の宋永吉議員(現国会外交統一委員長)、禹相虎議員、洪翼杓議員など、80年代に学生運動を行っていた政治家たちが多く名を連ねている。では、南北財団はどのような形で北韓に著作権料を送金したのだろうか。
| 2018年2月、韓国を訪問した北韓の金与正と握手する任氏(左) | 発端は05年12月31日。南北財団は金剛山で、北韓の内閣傘下組織である「著作権事務局」と協約を結んだ。この日の協約で南北財団は、韓国国内の放送局が使用する朝鮮中央TVの映像など、北韓の出版・映像などの国内著作権を北韓から委任される形となった。
南北財団はその直後、北韓の著作権料事業を展開するための付属組織を立ち上げた。06年に設立された「南北著作権センター」だ。センターの初代代表には、現青瓦台演説秘書官の申東昊氏が就任した。文在寅大統領の演説原稿作成を担当している申氏は、大学時代に運動組織である「全国大学生代表者協議会(全大協)」で文化局長を担っていた。つまり、全大協における任氏の直属の後輩ということだ。
この時から、「南北著作権センター」はKBS、MBC、SBSなどの国内放送局から、北韓の出版・映像を使用した対価として毎年3000万ウォン前後の使用料の徴収を始めた。南北財団と同センターがこれまで北韓に送金した著作権料は05年・2億4000万ウォン、06年・2億3786万ウォン、07年・2億3197万ウォン、08年・8232万ウォンで、累計7億9217万ウォン。韓国ウォンで受理した著作権料は米ドルに換金した後、統一部の承認を経て北韓へと送られた。
しかし09年、対北送金中断という事態が発生する。08年7月、金剛山観光客のパク・ワンジャ氏が北韓の兵士によって射殺される事件が発生すると、政府は対北制裁を発動し、送金を全面禁止した。対北送金の手段が途絶えた財団は「切り札」を切った。09年5月以降、放送各局から受領した北韓著作権料を裁判所に供託するという方法をとったのだ。
09年から今年までに南北財団がソウル東部地方裁判所に供託した金額は、09年・2265万ウォン(19年回収)、10年・2億789万ウォン、11年・1億707万ウォン、12年・1億6990万ウォン、13年・1億8432万ウォン、14年・2億1033万ウォン、15年・1億7508万ウォン、16年・1億8454万ウォン、17年・1億9763万ウォン、18年・1億9252万ウォン、19年・2億501万ウォン(09年分の再供託含む)、20年・2億3469万ウォンで、総額20億9243万ウォン。米ドルに換算すると約170万ドルに達する。
今年7月、脱北国軍捕虜たちが北韓政権と金正恩を相手取った損害賠償請求訴訟で勝訴すると、弁護人は「南北財団」の裁判所供託金を差し押さえることを明らかにした。金正恩から直接損害賠償を受ける手段がない現状を鑑み、北韓政権に送金すべく裁判所に託していた「北韓著作権料」に対して回収命令を発令し、国軍捕虜たちの賠償金に充てる計画だ。国軍捕虜たちは果たして、南北財団の供託金を賠償金として受け取ることができるのか。今後の動きが注目される。 |