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2020年06月24日 00:00
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キスン便り<第19回> 韓国と日本の相違④

 徴用工問題で感じるのは、韓国は完全に日本の出方を読み誤っているということです。日本人がどういう民族かを韓国人がここまで知らないというのは、呆れるばかりです。
ボタンの掛け違いは韓国人が、日本人も自分たちと同じようなときに怒る、と思い込んでいる点にあります。しかし日本人の怒り方は、他の民族とは顕著に異なります。
私が若い頃は東映のヤクザ映画全盛期でした。高倉健は理不尽な親分の言うことに耐えに耐え、いよいよ耐えきれなくなったときに、ドスを片手に死地に赴きます。バックには唐獅子牡丹の歌が流れます。悪い親分の手下が健さんの後をつけます。すると客席から声が掛かります。
「健さん、背中がやばいぜ」
観客もみんな健さんが最後には死ぬことを予感しています。それでもガマンしきれなくて腹を立てる、これが日本人の腹の立て方です。日本人が腹を立てるときは、既に死ぬことを覚悟しています。しかし韓国人は相手の譲歩を引き出すために、パフォーマンスで腹を立てます。腹を立てているのではなく、腹が立った振りをしているのです。韓国人の怒りは演技です。日本人とは全く異なる発想による腹の立て方です。
もっとも日本人でも最近は本当に簡単に切れる人が増えてきました。そういう人たちというのは、自己評価が高すぎて、社会の評価が低すぎることに腹を立てるのだろうと思います。価値と値段の混同です。年収いくらという世界では、その人の値段は相手がつけます。自分が一千万だと言っても、三百万しか払う人が居なければ、その人の値段は三百万なのです。しかし価値というのは、人間の尊厳に関わるものであり、それは誰かに決めてもらうわけには行きません。価値はその人自身が決めるものです。
伝統的な日本人はこの価値を守るために腹を立てました。値段のためには腹を立てませんでした。武士はまともに生活できないような禄高しか貰えなくても大して気にしません。しかし己の存在に関わる点では腹を立て、腹を立てたからには己の主張を通してから切腹する、という価値観でした。日本人の価値観は公に結びついています。
韓国では「エセ寅次郎」が自分とチングだけが利益を得ることなのに、「公」や「正義」を叫びます。彼等の「公」や「正義」は日本人が知っているそれとは大部異なります。最近の慰安婦団体の姿はこうしたことを如実に示しています。韓国語のチングは多くの局面で「派閥」という言葉に置き換えが可能です。韓国人は未だに李朝時代と同じ派閥闘争を続けているのです。
韓国は三千年間侵略され続け、内部では権力争いを続けてきたので、自分の命を守るために家族やチングだけが頼りでした。
派閥は人類にはつきものです。それ自体を悪いとは思いません。韓国で問題なのは、明らかに会社や国に不利なことなのに、何でも利用して目先の勝ちを取りに行くという点です。
反省すべきはこういう韓国の前時代的な価値観です。その根底には、全ての厄を他人に押しつけて、自分だけは清く正しく美しい韓国人になろうとする行動パターンがあります。簡単にいうと直ぐに犯人捜しをするのです。多くの場合、犯人は日本であり、国を売った五賊になります。しかし韓国人全員が同じ価値観を持っているのですから、犯人を見つけて安心するのではなく、時代に合わない価値観そのものを払拭するにはどうすべきかと考えるべきなのです。しかし多くの韓国人は犯人を捜すと、全てをその者のせいにして安心してしまいます。
日本に喧嘩を売るのなら、戦略を立てて売るべきです。正義を叫んでいる内に、知らぬ間に喧嘩を売っていたというのはお粗末です。

 李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』、『鬼神たちの祝祭』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。

2020-06-24 5面
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