左承喜・朴正熙大統領記念財団理事長(70歳)は、現実主義者を自認する。経済学者である同氏いわく、大韓民国の成功の秘訣は、遠くから求めず、韓国人自らが汗を流し成功を成し遂げた朴正熙時代が教えてくれると力説する。企業への制裁は反市場主義であり、韓国を衰退させる悪手になる、という彼の警告はぞっとするものだ。 (ソウル=李民晧)
| 左承喜理事長 | ――朴正熙元大統領の功罪に関する賛否がかまびすしい。
「左派は、大韓民国が発展するためには朴正熙を否定すべきだと主張する。この30年間、「漢江の奇跡」を消す作業が休みなく行われてきた。だが、歴史の記録は消せない。朴正熙時代の20年間は、韓民族史において最も速く、最も高く成長した時期だ。階層に関係なく、だれもが成長した。このような成功は世界史で類を見ない。大韓民国の生きる道は、新しい理論や遠い外国から求めないで、自強に成功した朴正熙時代から学べば良い」
――文在寅政権下で反企業政策が強くなるという懸念の声が聞かれる。
「左派的社会主義は社会を成長させられない。国を貧困のどん底に落とすだけだ。韓国は1950~60年代に世界で最も凄惨な農耕社会を経験した。独裁封建体制である北韓も年平均3%以上は成長しているのに、現在の大韓民国は低成長で二極化の沼に陥ってもがいている。なぜか。経済平等主義と民主化という美名で社会主義をやっているからだ」
――反企業政策の副作用とは。
「今日、資本主義先進国の経済が低迷している原因は単純だ。カール・マルクスの理論を現実に適用したためだ。マルクスの資本主義に対する観点は、持つ者が持たない者を搾取するシステムということだ。資本主義は本質的に不平等という認識がある。「隣人が興れば、私は滅びる」という概念だ。これが社会を下方平準化へと押し、最終的には農耕社会へ後退させる。1990年代初め、ソ連と東欧圏の共産国家が崩壊したときを振り返ってみると、その国々はすべて農耕社会に戻った。共産党が管理した工場や国有企業が全部止まった」
――資本主義社会での企業の役割とは。朴正熙時代の企業政策は。
「一時、社会主義の成功モデルと言われたソ連が崩壊した決定的な原因は、資本市場の要諦である企業をなくしたためだ。企業を国有化し共産党が管理した。経営能力がないにもかかわらずだ。では、朴正熙はどうだったのか。彼は反共と資本主義を標榜した。朴正熙の企業政策は、一言でいうと信賞必罰だった。天は自ら助くる者を助くと、成果を出す企業にはインセンティブを与え、問題を起こした企業にはペナルティを与えた。それが漢江の奇跡につながった。(砂糖会社として出発したサムスンが世界屈指の大企業になったように)、中小企業が成長を続けて大企業になっていった。注目すべき部分は、朴正熙時代の韓国は自ら経済を強く発展させた『自強経済』を構築したという事実だ」
――文政権の「差別のない世の中作り」という公約は成功するか。
「朴正熙時代の信賞必罰の原則は単純だ。成果を出せば生き残り、成果を出せないと死ぬのが要諦だ。李承晩が資本主義を導入した指導者であるなら、朴正熙は企業が成長できる基盤を作った。ところが、後に韓国がOECDに加盟するとき、反朴正熙路線で行けば必ず先進国になると信じていた人々が少なからずいた。その結果がどうなったのか。分配だの平等だのような左派的な考えは理想的でかつ甘く響くが、成功をもたらさない。修正資本主義や社会民主主義は所得の平等を通じて幸せな社会を作ろうとしたが、現実は決してそうならない」
――朴正熙の政策は過去のものであり、現代には合わないという指摘も。
「人類が農耕社会を脱皮し産業革命を経て発展する過程を見れば、必ず不平等という社会的現象が現れる。人類は誕生から、常に他人を評価し差別しながら生きてきた。天は自ら助くる者を助くという言葉は、極めて単純だが人類の経験則だ。朴正熙時代を改めて振り返り考察しようというのは、その時代が政策的に成功を収めたからに他ならない」 |