5月に36年ぶりの党大会が開かれる北韓では、住民を動員した思想教育や労働が行われている。北韓では重要行事があると、「○○日戦闘」が繰り広げられることがある。現在行われているのは「70日戦闘」だ。
36年前の党大会や昨年の労働党創建70周年前には「100日戦闘」が行われた。それに比べれば1カ月短いが、労働者は各工場での増産体制に対応しつつ、与えられた別のノルマをこなさなければならない。
戦闘は軍人や青年、労働者など、全住民が対象になる。北韓メディアは、電力・石炭部門は生産の正常化、金属部門では鉄の増産を奨励している。化学工業部門ではビナロン、軽工業部門では特産品の生産がスローガンとして掲げられた。いずれも、輸入に頼ることなく原料や資材の国産化を実現することが念頭にあるといっていい。
「史上最高」の実績が求められるのは産業部門だけではない。スポーツや芸術部門でも、「新たな体育神話」や「時代の名作をより多く」といった言葉が並ぶ。
過去に数回の「○○日戦闘」を経験した脱北者の男性によると、初めて行われたのは1974年末の70日戦闘だったという。当時は今よりも工場の機械や資材、電機などのインフラが整っていたため、中には通常の5倍の生産高を記録した鉱山もあったと話す。
「鉱山などでは期間中、作業員は現場で寝泊まりしながら働きます。食事は家族が届けてくれます。寝泊まりは義務ではありませんが、党秘書が何人かの労働者に泊まり込みを命じるのです。それが賞賛されるので、周囲の労働者もそれに従わなければならない雰囲気になるのです」
男性はほかにも100日戦闘や200日戦闘も経験している。だが、意外にも70日戦闘の方が生産性が上がったと記憶している。
「過労で体調を崩して病院に行った際、医者の先生に言われました。『70日は、人間が根を詰めて働けるぎりぎりの日数で、医学的に考えられたものだ』と」
最初の70日戦闘は、成績優秀者は朝鮮労働党員になれたため、現場の士気は高かったという。ノルマを達成できなければ完遂するまで残業を強いられたが、電機や資材が足りずに作業できないときは免除された。だが、現在はどれほどの効果があるかわからないと専門家は指摘する。工場では原料の調達が、鉱山では機械や電力の不足が懸念されているためだ。
現在行われている70日戦闘では、思想教育が徹底されている。ある工場では始業前から従業員を集め、忠誠を誓いあう集会を開いているという。
忠誠心は特に重視される項目だ。働きぶりから忠誠心がないと判断され、平壌から追放される。外貨稼ぎは特に厳しいノルマが課せられており、まさに人民の搾取だ。それを苦にした脱北も増えそうだ。 |