金正恩は今年に入って「水爆実験」、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を立て続けに命令してきたが、3月に入っても短・中距離ミサイルの発射や、弾道ミサイルの「核弾頭小型化」、弾頭の大気圏再突入試験の場面まで大々的に報道させるなど、核兵器体系の完成を誇示している。
朝鮮中央通信は22日、新型ロケット発射実験が成功したと伝えた。おそらく、前日の21日に発射した射程200キロほどのものを指すようだ。24日にはロケット用の固体燃料の燃焼試験に成功したと発表し、関連写真も公開した。
一連の報道は、いずれも以前は考えられなかった軍事機密の公開だ。しかし今は、金正恩がこのすべてを指示し、現場で「指導」したと強調されている。
北韓が保有する放射砲や弾道ミサイルは、すべてが先制攻撃用だ。特に、南韓の半分近くを射程に入れる放射砲は、韓国軍にとってスカッドやノドン・ミサイルよりも脅威といえる。その理由は、韓米連合軍が展開させている現在の防空体制ではほぼ迎撃できないためだ。「撃たれる前に撃つ」しかない。
北側は非武装地帯に沿って最前線に坑道を掘り、その中に放射砲など韓国の首都圏を攻撃できる大規模の砲兵部隊を配備している。ソウルの大統領を狙った青瓦台などへの攻撃訓練や、韓国に対する上陸訓練まで金正恩が参観し、指導している。
北側が核兵器体系の完成を宣言した以上、韓米連合軍は衛星などを使って北側の動向を監視し、対南全面攻撃の兆候が確認されれば、全力を挙げて先制打撃を加えることになっている。
22日に実験成功が伝えられたロケットは、韓国軍の対応に新たな負担を与えた。特に、北側のミサイルが固体燃料に変われば、時間や手間のかかる液体燃料ミサイルより、発射準備を事前に探知するのがはるかに難しくなる。
金正恩の危険な暴走を3月から始まった韓米連合軍の訓練への反発だと解説する内外の「専門家」は多いが、北側は毎年12月から4カ月ほど冬季軍事訓練をする。例年の訓練の一環だ。
今年に入って金正恩が派手に核保有国であることを宣伝するのは、36年ぶりの党大会(5月)を控え、「核保有国・金氏王朝」を強調せざるをえないという、金正恩と労働党の事情があるからだ。その一つが、北が発表している「青瓦台襲撃」や上陸訓練だ。韓米も「金正恩斬首作戦」を公開している。
いずれにせよ、金正恩が追求する核兵器体系の完成、特に実戦で使える核兵器の小型化は、韓国に決断を強いている。戦闘は、たとえ戦力に劣っていても、先制攻撃する方が有利だ。核兵器を使えば、韓米連合軍の力を大幅にそぐこともできよう。韓国は金正恩を確実に抑止できる対策を取らねばならない。 |