金正恩は、4回目の核実験だけでは満足できなかったのか、長距離ミサイルまで発射した。長距離ミサイルについては人工衛星であり、衛星打ち上げは、宇宙の平和的利用のための主権国家の権利という主張だ。
北韓は2012年4月と12月の打ち上げ時にも同じ主張をした。しかし国際社会は、それが明らかな嘘であることをよく知っている。金正恩執権初期、北韓軍の総参謀長を務めていた李英浩の講演録音記録に、北韓の真意がそのまま含まれている。
李英浩は2012年、平壌での幹部会議で「人工衛星は、ロケット兵器と同じだ。そのロケットに核兵器を搭載すれば、米国本土まで届く。だから私たちの決心は固い」と述べた。
李英浩の言葉は事実だ。宇宙まで飛べば人工衛星であり、衛星を搭載する代わりに核兵器を載せて地球に再突入すれば核ミサイルになるからである。
国連安全保障理事会は、北韓の4回目の核実験と6回目の長距離ミサイル発射に対する制裁決議案をまだ通過させていない。核実験後の対北制裁を議論していた最中に北韓が長距離ミサイルまで発射したため、追加の処罰も盛り込んだ制裁の水準をめぐり、安保理理事国の間で意見の差を調整しているからだ。
国連安保理の決議は、強制性を持つ。最も低いレベルが安保理議長の「報道声明」であり、その上が安保理「議長声明」、最高レベルが安保理「決議案」である。
北韓の長距離ミサイル発射に対して、国連安全保障理事会は1回の報道声明(1998年)、2回の議長声明(09年、12年)、そして2回の安保理制裁決議案(06年、13年)を通過させた。核実験については06年、09年、13年にそれぞれ安保理決議第1718号、第1874号、第2094号を採択した。北韓がNPT脱退を宣言したときには、再考を促す決議(825号。93年)を発表した。
いくつかの決議案の最初の文言は、かなりの警告を込めた内容になっている。過去の議長声明や決議案の内容を羅列しなければならないからだ。
韓国ではしばしば、罪を犯して罰を受けた後、「星がついた」という。罪を犯すたびに星の数は増える。安保理が北韓に星をつけるとすれば、決議案だけでみても北韓はすでに6つ。星の数は今や、7つになろうとしている。
この星はもちろん勲章ではない。星の数が多くなるほど、処罰は重くなる。したがって対北制裁の水準も、過去の制裁内容よりも強化される以外にない。
安保理決議という集団的制裁とは別に、各国の独自制裁もある。韓国はすでに金正恩の核およびミサイル挑発への先導的な対応として、開城工団の全面中断を宣言し、日本も北韓への送金遮断や北韓船舶の入港を禁止するなどの制裁案を発表した。米国も上・下院が史上最も強い金融・経済制裁を含む対北制裁法を圧倒的多数で通過させた。EUとオーストラリアも個別の制裁を科すだろう。
イラク大統領だったサダム・フセインは、国連安保理の制裁決議案をまるで意に介さぬかのようにふるまった。その間に星の数は増え、最終的には国際社会からの軍事的制裁に遭い、歴史の中に消えた。国際社会の警告を甘く見たつけだった。
今の金正恩の姿は、フセインと重なって見える。今回の安保理決議案は、金正恩につく最後の星になりうる。個々の国の制裁も、金正恩の”命綱”に照準を合わせているからだ。
開城工団の閉鎖で職を失った住民の怒りも金正日の運命を早めるかもしれない。彼らだけでなく、お金の味を知ってしまった北韓住民は、これ以上金正恩を許さないからである。
金烈洙(誠信女子大国際政治学教授) |