シリアなどからの難民が、ヨーロッパで社会問題になっている。戦火に追われ、国外に逃避している人たちの一部は、故郷に戻れる日を待つことをやめ、他国に安住の地を見つけようとしている。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がまとめている世界の難民・国内避難民に関する「グローバル・トレンド」によると、2014年末の時点で、最も多くの難民が発生しているのはシリアで約400万人。2位はアフガニスタンの約250万人で、3位のソマリア(約100万人)と合わせて上位3カ国で世界の全難民の半数以上が発生している。
NPO法人「難民支援協会」によると、日本には400人以上のシリア人が暮らしており、うち60人以上はすでに難民申請をしているという。全員が日本を目指してきたのではなく、ブローカーから入手できたビザがたまたま日本のものだったというケースもある。
ただ、難民認定を得られたシリア人は3人しかいない。2014年の難民申請者は過去最多の5000人だが、認定を受けられたのは11人にすぎない。
韓国では2014年、2896人の申請に対して94人が認められた。率にして日本の10倍以上だが、国際社会における韓国の立ち位置を考えると、決して満足な数字とはいえないだろう。
支援協会の石井宏明・常任理事によると、日本では法務省が難民認定を担当しているが、「不法入国者を水際で食い止めるという考え方の法務省には限界がある。認定の専門家がやるべきだ」と訴える。認定を受けるまでに十数人分の決済を得なければならないという日本の壁の高さは際立っている。
日本で考えられる難民の大量受け入れは、韓半島有事の際に北韓住民が国外に溢れ出すケースだ。石井さんは「90年代に日本政府は最大30万人と試算していた」と述べるが、日本に押し寄せる可能性は少ないとみている。日本に来る手段が見あたらないためだ。現在日本にいる脱北者は、いずれも元在日韓国人か日本人妻、あるいはその子孫で、それ以外は原則的に韓国に送られる可能性が高い。
問題は中国だ。中国は脱北者を「不法越境者」として北に強制送還している。韓国内では難民条約に加盟する中国が脱北者を難民と認め、韓国に送還するよう求める声はあるが、実現には至っていない。 |