1950年に勃発した6・25戦争(韓国戦争)の前後に南北生き別れになった肉親同士が、約65年ぶりに束の間の面会を許された。監視員つきで10時間あまりの集団面会を、関係者は「人道的事業」と自賛する。(溝口恭平)
非情な現実「動物園式」との批判も
「動物園式面会」。こう呼ばれて気分を害する人もいるかもしれない。「自分たちは見世物ではない」と。しかし、幸運にも再会の機会を得た人にとって、それはつらい瞬間の始まりでもある。
南北離散家族再会事業は2度に分けて行われた。20~22日は、北側が要求した韓国側の家族が、24~26日までは、韓国側が探した北側の家族が、金剛山に設けられた面会所に出向いて肉親との再会をはたした。いずれも100家族規模だ。
徹底した監視を受けながらも、メディアはこぞって抱擁する家族の姿を捉える。涙を誘うエピソードも多数紹介される。しかし20回目となる今回の離散家族再会事業には、市民から厳しい批判も寄せられている。生き別れた家族を会わせるなというたぐいのものではない。会わせる方法が問題だという。
家族たちは今回、合計10時間しか会う時間を持てなかった。それも、監視員がいる環境でだ。家族水入らずの時間はなかった。再会事業は「人道事業の一環として」と説明されることが多い。関係者も開催したことに胸を張る。しかし、現実はあまりにも非情だ。再会した家族は、電話や手紙、メールのやり取りすら許されない。
大多数の再会希望者は、相手の生存確認さえとれていない。その生存確認でさえ正確さに欠ける。今回再会した人の中には、以前「死亡した」と伝えられた男性が含まれていた。
韓国には6万人以上の再会希望者がいる。全員高齢者だ。今のように数年に一度、100人から200人ずつでは数百年かかる。大半は、生きて再会すら望めない。
韓国側も手をこまねいているばかりではない。北側に希望者全員の生死確認を求め、手紙のやり取りや短期の故郷訪問なども求めている。だが、北の反応は消極的だ。そもそもの思惑が、対南宣伝だからだ。
韓国内では、国軍捕虜の送還を強く求める声が強い。戦闘員として捕えられ、韓国に戻れないままになっている彼らは、国際法上も速やかに身柄を送還されるべき存在だ。生存者は数百人といわれる。
今回は拉致被害者も含め、事前に50人が生死確認の対象者になった。しかし50人の中に生存が確認された人はいないとされた。
在郷軍人会会員らは19日、ソウル市内で国軍捕虜の即時返還を求める集会を開いた。主催者側によると、4000人が集まった。参加者らは、政府に原則的な対応を求めた。また、救出の責任は、軍の最高司令官である大統領にあるとも指摘した。国連のソウル事務所に、北の人権侵害の一例として強く訴えるべきとの意見もあるが、政府は動いていない。 |