分断によって離れ離れになった南北の離散家族。南北当局は8月25日の合意に従い、来月20~26日に金剛山で離散家族の再会を予定しているが、果たして実現されるのか。関係者らは固唾をのんで見守っている。諸般の状況を考えれば、事は簡単に進みそうもない。再会予定日前の10月10日、北では朝鮮労働党創建70周年イベントが予定されている。北が何らかの形で、武力挑発や示威行為を行う可能性は低くない。
(ソウル=李民晧)
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大韓赤十字社は9日、再会希望者の抽選を開始した(写真=連合ニュース) |
大韓赤十字社に登録されている離散家族は約6万6000人。今回の再会の場に出席できるのはこのうち100人で、なんと660倍という倍率の狭き門となる。
高齢化も深刻だ。登録された離散家族のうち、53%が80歳以上で、そのうち90歳以上は7000人を超える。厳しい競争を経て、老いた体で金剛山に向かい、そこで半世紀以上生き別れになった肉親に会えればいいのだが、その保証は100%ではない。
これまでの北の行動を考えれば、10月の労働党創建70周年行事に合わせて武力挑発が起こる可能性は決して低くない。韓米情報当局は可能性として、大陸間弾道ミサイルや、5月に行われた潜水艦発射弾道ミサイルの実験を挙げる。平壌でのパレードで、これらを含む最新式の兵器を隊列に登場させる確率は高い。
韓国国防部筋では、北が今年、核兵器の小型化の必須過程である高爆実験をしていないことに注目しなければならないという声も出ている。国防部のチョ・ボグン国防情報本部長は10日、国会国防委員会の国政監査で、北の高爆実験の現状を問う質問に対し「今年はなかった」と答えた。
これをめぐって二つの分析が出ている。一つは、10月10日前後に高爆実験を実施する可能性があるということだ。北は1980年後半から平壌市内の実験場で100回以上の高爆実験を行っている。
もう一つは、すでに核弾頭の小型化技術を確立しており、高爆実験はこれ以上する必要がなくなったという解釈だ。
ウィリアム・ペリー元米国防長官は8月25日、日本での記者会見で、「北は核爆弾を中・長距離ミサイルに搭載するという目的があり、科学者たちは核爆弾の性能を確認するため、核実験を要求したようだ。しかし指導部からは核実験を断行するかどうかの結論が出してこなかった」と述べている。韓国の韓民求国防長官も同日の国政監査で、「北韓が自ら核兵器の多種化、小型化、精密化を継続すると述べたので、その(北韓の核兵器実戦配備の)可能性は高いと見て綿密に追跡している」と答えた。
10月16日にはワシントンで韓米首脳会談が予定されている。朴槿惠大統領とバラク・オバマ米大統領が何らかの形で、北の挑発には共同対応するという趣旨の発表を行う公算が大きい。そうなれば北は反発し、声明発表などの動きを見せるのは必至だ。
外交や記念日のスケジュール、今までの北の行動を考慮すると、10月20日から始まる離散家族再会行事を前に、何らかの障害が生じる可能性は高い。最悪の場合、行事中止ということにもなりかねない。過去にもそうした例はある。
韓国政府は、北が挑発しても、離散家族の再会には最善を尽くすという立場を示している。統一部の洪容杓長官は国政監査で、「状況について予断をもって話すのは適切でない」と断言を避けた。
一方大統領府は8月の南北高位級接触後の合意事項を発表後、公式の立場を示していない。青瓦台の沈黙は、合意履行に自信が持てないことの表れなのか、それとも北との関係が硬直した際に、批判の矢面に立たされることを避けようとしているのか。
国内では疑問の声が起きている。北との間で合意を導いた会談担当者の金寬鎭・青瓦台国家安全保障室長に対してだ。
なぜ実現の可能性が低い10月20日にしたのかという批判と疑問の声に対し、金室長や周囲の関係者は、韓国側は秋夕(9月27日)に再会行事を行おうとしたと主張する。しかし北の主張が通った。この日程で開催できなければ、北に責任をかぶせるだけでいいのかという批判にさらされるだろう。
一方、南北合意の裏で、5・24措置の解除があるのではないかと疑う声が出ている。5・24措置とは、2010年の天安艦爆沈事件後にとられたもので、韓国独自の対北制裁だ。ただ制裁の基準は徐々に下げられており、最近では解除すべきとの声も目立ってきている。北も以前、離散家族再会は制裁の解除後だと話したことがある。
今年8月の合意発表後、野党の新政治民主連合は、南北経済協力活性化を柱とする「韓半島新経済地図構想」を発表。文在寅代表は、金剛山観光事業を担う現代峨山の社員や、全国経済人連合会の役員などと相次いで懇談会を開いた。北韓のインフラ開発、経済交流の活性化など、経済的に統一を成し遂げようという声が高まった。
こうした主張は野党だけの考えではなく、政府とも通じているのではないか、政府が「原則を曲げた」といわれるリスクを軽減するため、野党を利用して世論の動向を見計らっているのではないかという説が出ている。 |