北韓軍が非武装地帯(DMZ)に埋めた地雷を踏み、韓国兵2人が重傷を負った。事件をきっかけに高まった南北間の緊張局面をめぐり、金正恩は硬軟両面の戦略で韓国を揺さぶった。金日成、金正日の時代から続く「瀬戸際戦術」だが、韓国内の世論の反応は冷ややかだ。若者を中心に、「徹底的に対応しろ」との声が以前にも増して強まった。南北は25日、北が遺憾の意を示し、韓国が対北放送を止めることで妥結した。(ソウル=高正基)
| 「待機しています」、「忠誠!」などと書かれたSNSの書き込み | 今月4日にDMZの韓国側で地雷が爆発し、韓国兵2人が脚を切断するなどの重傷を負った。北の犯行とみた韓国は報復として北韓向け宣伝放送を約11年ぶりに再開。20日には北がソウル北方に向け砲撃し、「準戦時状態」を宣言。48時間以内に放送を止めよと要求した。
韓国軍は応射した。砲撃の応酬で南北間の緊張は高まったが、22日からの南北当局者間対話の結果、北側が遺憾の意を示し、韓国側が放送を止めることで合意に至った。25日の午前1時だった。ただ、地雷を仕掛けたのは誰か明らかにされず、玉虫色の決着となった。
一連の流れは、韓国を挑発して緊張を高め、話し合いを行うという北の伝統的な手法だった。しかし韓国では、過去に見られない反応があった。2010年3月に発生した韓国の哨戒艦「天安」爆沈事件の際には北の仕業ではないとする意見も多く出てきたが、今回は「北韓の挑発に断固対応すべき」とする声が大きかった。
韓国メディアが23日に実施した世論調査によると、20~30代の若い世代の82・8%が「北韓の責任が大きい」と答えた。
「戦う準備はできています。いつでも呼んでください」
北による軍事挑発を受け、韓国のインターネット掲示板にはこんな書き込みが相次いだ。ある男性は軍服の写真の写真とともに「除隊して4日が経ちましたが、待機しています」と書き込んだ。ある市民は「私も35年前に軍人だった。今でも戦える」と、軍服を着て銃を持っている若い時の写真を掲載した。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には最前線の部隊で勤務している軍人を応援する書き込みが増え続けた。北韓に厳しく対応するとした韓民求・国防長官の談話には、1500件を上回る書き込みがあった。ほとんどが応援するものだ。
北韓の狙いとしては、韓国世論を二分し、政界再編に揺さぶりをかける狙いがあったとみられる。しかし今回、ほとんどの韓国国民は「徹底対応」を望んだ。協議の結果は玉虫色だったが、これがどのような余波を呼ぶのか、状況の推移は今後も注目される。 |