金正恩体制になり、脱北者の取り締まりが厳しくなっていることはよく知られている。ただでさえ厳しい密告社会といわれる北で、特に厳重な取り締まりとなれば、脱北の困難さは相当なものとなる。事実、脱北者の数は激減している。
しかし、どれだけ統制を強めても抜け道を見つけてきたのが北の住民だ。脱北にも新たなルートができはじめているという。なんと、国境警備の軍人が、現金収入を得るためにルートを作り、そこから脱北者を逃しているようだ。
米政府系ラジオの自由アジア放送によると、脱北の手引きをしているのは除隊を間近に控えた軍人だという。社会復帰するにあたり、現金を確保しておこうという考えだ。除隊間近であれば、部下も多い。意のままに動く部下が数人いれば、彼らを采配して脱北者を逃がすことも容易になる。
中朝国境地帯には高さ2メートルを超える鉄条網が張られている。だが、立ち入りが困難な山岳地帯には鉄条網がないところがある。北韓内のブローカーと組んでそこまで案内し、逃がす役割を一部の軍人が担っているという。
軍人を悩ませているのは、中国側でも警備が強化されたことだ。今までは、中国内に潜伏している脱北者を取り締まるのは公安の仕事だった。それが、中国軍が投入されるようになった。脱北者が捕まり、強制送還されることを国境警備の軍人はもっとも恐れている。取り調べで軍人の関与が明らかになれば、協力者の命も危うくなるからだ。
北韓兵が頼みとしているのが韓国の脱北ブローカーだという。渡河の場所と時刻を正確に伝え、中国軍に見つかる前に脱北者の身柄を保護してもらうのだという。多くの人が関与するため、脱北コストは100万円を超えるともいわれる。 |