セウォル号事故とその後の法制定をめぐり、朴槿惠政権の正常な国政運営、特に法治維持ができるのかが決定的に問われている。セウォル号事態は大韓民国が直面している危機を総体的に表している。 先週の週末も「青瓦台への進撃」を叫ぶセウォル号対策委の集会で光化門一帯の渋滞はひどかった。背後で従北勢力が主導するいわゆる「セウォル号対策委」は、国政を麻痺させ、政権を転覆するのが目的になった。 そもそも従北勢力は、民主政治制度の核心である選挙制度の基本ルールを守ったことがない。セウォル号事態は、先の大統領選挙で朴大統領が当選したことを認めない闘争の延長なのだ。彼らは8月に訪韓したフランシスコ教皇まで朴槿惠打倒闘争に利用した。 セウォル号事態は、李明博政権のときの米国産牛肉に対する「狂牛病乱動」事態と構図は同じだ。民間の旅客船に起きた海難事故が、どうして政権打倒の理由になりえるのか。セウォル号事故のいわゆる「対策委」は、事故の真相究明のための特別委員会を被害者の遺族たちが主導することと、彼らに捜査と起訴権まで要求している。 北韓による海軍哨戒艦・天安の撃沈に対しては糾弾どころか、いまだに陰謀説を流布させているのがセウォル号事故の真相究明を要求する勢力だ。ましてやセウォル号事故は、すでに裁判が進行中の事案だ。 これは法治の根幹を破壊するものだ。三権分立や国家という共同体の解体を意味する。この法治破壊乱動に加担したのが、あろうことか野党や国会自身である。 第1野党である「新政治民主連合」(旧民主党)は、何かがあれば、自分たちが事実的に牛耳っている国会まで捨て、街頭へ飛び出して”場外闘争”に走る。内乱陰謀などの容疑で有罪になった統合進歩党の李石基被告に対しては国会次元で懲戒(議員職除名)もせず、憲法裁判所で政党解散審判の対象になっている統合進歩党と一緒に行動している。 もちろん、民主党と統進党の政策連帯も解消されていない。李石基に対する断罪や統進党解散に抵抗する勢力が、朴槿惠政権打倒闘争の中核をなしているのだ。 元々従北左派は、建国以前の「南労党」時代から、人間の死を体制や政権打倒闘争に利用してきた伝統がある。大衆の疑心や憎悪心に火をつけ、それをさらに煽るためには死体を利用するのが最も効果的だと考えているのだ。 金正日の直接指令で恣行され、多くの乗客が死亡した大韓航空機爆発テロ(1987年)に対しても、カトリックの正義具現司祭団は今も韓国政府の陰謀説を主張する。犯人の金賢姫を偽物だと言い切って有名な沈載桓は、統進党代表の李正姫の夫であり、康宗憲の再審裁判の弁護人だ。 新政治民主連合が韓国の法治を麻痺させ、政府を無力化してからやったのが、金大中元大統領の5周忌に送る金正恩の弔花を、金元大統領の側近だった朴智元と、金政権下で統一相や国家情報院院長を務めた林東源を北まで送って持ってこさせたことだ。 新政治民主連合は、金正恩名義の弔花を、韓国の歴代大統領の弔花より上席に置いたのはもちろん、下に赤いカーペットを敷いて朴槿惠大統領の弔花よりも礼遇した。従北派は、任期5年の韓国大統領よりも、任期のない世襲独裁の金正恩を精神的に指導者として仰いでいることを端的に表現したといえる。 自由民主体制の法治が破壊されれば、その後に来るのは、「万人の万人に対する闘争」か「独裁」だ。従北左翼勢力が期待するのは独裁、それも「民衆独裁」だ。 金大中・盧武鉉時代の大韓民国は、憲法の上に反憲法的な「6・15宣言」が、そして立法・司法・行政の三権の上に「過去史委員会」が君臨していた。これこそ民衆独裁を可能にした装置だった。 康宗憲や都相太とも格別な間柄である林東源は、国家情報院長でありながら国家保安法を踏みにじって金大中の命令で、4億5000万ドルを金正日に不法送金し、米国が北の核疑惑を捏造したと主張してきた、金正日の工作員・弁護人だ。朴智元は、1970年頃から「連邦制」スローガンを金日成と共有してきた金大中の忠臣だ。 いま韓国で展開されている混乱事態は、法治を破壊して民衆独裁への道を開き、「6・15時代」を再現しようとする従北派による総攻勢の表れだ。もちろん、従北派の権力への禁断症状でもある。(続く) |