統一準備委員会(以下統準委)が発足した。朴槿惠大統領の主宰で7日午前、最初の会議が開かれた。統準委が、統一に備えてどのような実践をしていくのか注目されている中、委員会の具体的課題は定まっていない。統準委員に任命された21世紀国家発展研究院の金錫友院長に聞いた。金院長は外交部と統一部(旧統一院)に勤務した元官僚で、南北関係の研究をしてきた。日本、中国事情にも明るい人物だ。(ソウル=李民晧)
多分野にまたがる委員 「まとまって最善策出して」
| 金錫友 | ◆統準委スタートの意味
―― 朴槿惠大統領が新年に提起した「統一大当たり論」や統準委発足は、統一への関心を持たせるきっかけではないでしょうか。政府のこのような一連の動きをどのように評価しますか。
「遅れた感はあるが、統治権者として、時宜適切なアクションだった。朴大統領の国政核心アジェンダは、経済と統一の2つだ。セウォル号の事故を収拾し、経済を活性化する一方、統一に向けて積極的に準備するという意志を見せたのだ。『統一は大当たり』という単純なメッセージによって、統一がいかに必要であるかを国民に訴えかけたといえる」
―― 具体的にどのような意味がありますか。
「過去の政権の受動的な統一への意志を、能動的にした点だ。太陽政策政権の10年間、北韓に引きずられ、主導的に動いていなかった。最終的に分断管理のレベルを超えられなかったと思う。3年前、日本の学者と長時間話をする機会があったが、『韓国人が統一問題にそこまで受動的ならば、その可能性はない』といわれてショックを受けた」
―― ほかの海外の反応は。
「ワシントンの韓半島オピニオンリーダーたちの考えも、韓国政府は統一への意志がなく、北韓が中国に吸収されるという見方が大勢だった。それだけ韓国政府の意志は曖昧だと諸外国は認識してきた。今、南北平和統一の意志を明らかにする時が来た。大統領の年頭会見時、『統一は大当たり』がインターネット検索語で1位になり、統一反対派が多かった30代では肯定派が2割ほど増えた。統一は災いではなく祝福だという事実を実感しはじめたのだ」
―― 韓国政府の統一の意志が外部から疑われた事例は。
「2000年代半ばの脱北者が大量に発生していた時期、中国の強制送還に抗議する声は多かった。このとき、中国政府が『韓国が望むなら、全員を送る』と提案したという。本気かどうかを別にして、中国は韓国が望めば脱北者全員を送るといったのだ。しかし、韓国は受け入れなかった。盧武鉉政権時には、ベトナムから飛行機2機に乗って脱北者が韓国に来たが、北韓の抗議を受け、脱北者問題に消極的になったこともあった。統一で最も重要なのは、私たち、そして政府の強い意志だ。統準委発足は、その意志を明確に宣言したのだ。国の正常化への過程ともいえるだろう」
6・15宣言の実践は否定 海外同胞もいずれ委員に?
―― 統準委は何をすることになると思いますか。
「基本的には平和統一のために国民に共感を広げ、統一のための具体的な方向を提示し、官民の協議を通じて体系的に統一の準備するためだ。統準委の設立目的を盛り込んだ大統領令第1条に含まれている内容でもある。大統領が委員長ということは、統一を核心アジェンダにして、本人が直接まとめようという意志表示だ」
―― 既存の統一関連機関との違いは。
「統一部は南北関係と統一に関連する実務の役割を担う組織であり、民主平和統一は、大衆組織として統一に関心のある一般市民の運動体といえる。統準委は最高政策決定者を中心に、平和統一のビジョン提示と体系的な計画を統括することになる。2011年、英国のIISS(国際戦略研究所)が出した韓半島特集レポートを見ると、韓国は6・25戦争(朝鮮戦争)を経験した最貧国からOECDに加盟するほど飛躍的に成長した。これは偶然ではない。朴正煕大統領のビジョンやその実現のための計画によって、非常に短期間で達成した成果だ。韓国の統一はいつの日かなされる。経済発展を遂げたようにビジョンと計画が出てくれば簡単にできると記述されている。それが結論だ。統準委の役割と一致する」
―― 一方、統準委をめぐる論争は少なくありません。理念が異なる人々が集まり、専門知識の不足も指摘されています。適切に組織が機能していくでしょうか。
| ドレスデンで構想を語る朴大統領 |
「専門性に加え、各界を代表するさまざまな顔ぶれになった。理念対決の場ではなく、社会統合と同様に、統一問題について議論を重ね、最善策を引き出す努力をすることが重要だと考える。それなりに考えた人選だと思う」
―― 2000年の6・15宣言を実践する体制への回帰ではないかという指摘もあります。ややもすると、北韓政権を延命させる組織になるのではということですが、予防策は。
「その指摘には共感する。最も警戒すべき問題だ。太陽政策をとった政権で南北間の接触が広範になり、開城工業団地が設立され、対北人道的支援が多くなったが、北韓住民の利益とは関係がなかった。北韓政権に得になるようでは問題だ。耐えられないほど巨額の統一費用を負担するなら、悪しき政権でも延命させた方がましだというのは間違っている」
―― 北政権が崩壊すれば、北韓領が中国に編入されるという主張もありますが。
「分断を永続化するための扇動論理だと思う。中国が北韓に領土欲を示せば、ウイグル、チベットなどほかの少数民族の分離独立運動が激しく展開されるだろう。共産党体制の脅威になることを、はたして中国がするだろうか。北韓政権を助けようという考えを持つ人の主張には、北韓が中国の”東北4省”に編入されるというものもある。これも分断の永続化を狙った論理だ。彼らは07年に米国でオバマ政権が誕生すると『通米封南』(北が韓国を無視して米国とのみ通じること)になると強調し、北韓に融和的な政策をとるよう求めた。そのような扇動は虚構にすぎない」
―― 統準委には海外で統一運動に献身した方は入らなかったですね。
「スペースを残したのだと思う。統一日報だけを例に挙げても、創刊時から平和統一運動を展開し、統一理論を確立し、朝鮮総連系の故郷訪問団事業を企画するなど、多くの努力を傾けてきた。統一の過程で、海外同胞が果たすべき役割が出てくると信じている」(<下>に続く)
金錫友(キム・ソグ) 忠南・論山出身。京畿高からソウル大を卒業し、第1回外交官試験に最年少合格。外交部アジア局長や大統領府儀典長、国会議長秘書室長、統一院次官を務めた。現役引退後、北韓の人権問題など南北関係の活動を行ってきた。朴槿惠大統領就任後は、大統領の国家安全保障諮問委員会の統一と北韓の分野の委員に委嘱され、統一準備委員会の委員にも任命された。21世紀国家発展研究院長。 |