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2014年06月04日 00:00
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【寄稿】 6.15宣言の今日的意味を問う (下) 韓国現代史研究家・金一男

〈「6・15南北共同宣言」の内容〉
上記のような推移の過程で、2000年6月に韓国の金大中大統領が平壤を訪れ、金正日総書記と会談した。これは、北が核拡散防止条約から脱退する03年より2年半も前のことであり、06年10月に北が「核実験の成功」を宣言する6年以上も前のことであった。
2000年の「6・15南北共同宣言」に対して多くの韓国国民が期待したものは、南北間の恒久的平和の確保と、平壤政権の方向転換への可能性だった。そして、その先にある平和的・民主的・自主的な民族再統一の可能性であった。韓国国民の多くは、いま一度だけ同胞としての北を信じてみたいと考えていた。
「6・15南北共同声明」は、「互いの理解を増進させて南北関係を発展させ、平和統一を実現するため」との序文で始まる。それに次いで南北は、次の5項目の合意を掲げた。(1)国の統一問題を、その主人である我が民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくこと、(2)国の統一のため、南の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくこと、(3)今年の8・15に際して、離散家族、親戚の訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど、人道的問題を早急に解決していくこと、(4)経済協力を通じて、民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保険、環境など諸般の分野での協力と交流を活性化させ、互いの信頼を高めていくこと、(5)以上のような合意事項を早急に実践に移すため、早い時期に当局間の対話を開始すること。次いで、「金正日国防委員長は今後、適切な時期にソウルを訪問する」と付け加えられた。
〈「6・15南北共同宣言」のその後〉
共同宣言にもとづいて、2000年9月に「日本人拉致事件」に関わるとされた北朝鮮スパイの辛光洙が釈放され、北に送還された。この「送還」は愛国的革命家の「勝利の帰還」として北で大いに宣伝され、北の体制強化に役立てられた。しかし、それ以外の「合意」は何一つ実行に移されなかった。
第一の理由は、金正日総書記が「ソウル訪問」の約束を破ったためである。そのため、「当局間」の実務協議も進展しなかった。第二は、その後の北朝鮮のミサイル発射や核兵器開発の継続に対する内外の批判の高まりによる。ことに、06年10月の第1回「核実験」の強行は、「6・15南北共同宣言」の基本精神を根底から破壊するものだった。こうして、鳴り物入りの「6・15共同宣言」は反古にされた。
その後、韓国国内では期待を裏切った「太陽政策」に対する批判の声が高まり、世論は「相互主義」へと傾いていく。「相互主義」とは、一方的に与えるだけの「太陽政策」では平壤政権を変えることはできず、南側が経済的援助を与える以上、必ずそれに見合う北側の譲歩が伴わなければならない、とする原則主義的な考え方である。
以上の結果として、「6・15南北共同宣言」は、現在すでにその基盤をすべて失ったと結論できる。その原因はひとえに平壤政権の身勝手な行動にあった。したがって、「6・15南北共同宣言」の基盤を回復するためには、平壤政権の核兵器開発が完全に廃棄されること、また、韓国に対する攻撃的な政策が廃止されることが前提となる。
平壤政権による核廃棄の決意と実行のほかに、「6・15精神」の回復はありえない。南北交渉にあたっては、北同胞に対する南の善意を期待することはできても、「相互主義」原則を受け入れることが前提となる。居丈高に大量援助を強要するような、これまでの威嚇的な態度は慎まなければならない。
ところで、北の核兵器開発を容認しながら、平然と「6・15精神」を語る者たちがいる。また、韓国に対する数々の挑発行動を黙認しながら、あつかましくも「6・15精神」を語る者たちがいる。あまりに恥知らずな行動ではないだろうか。
〈「連邦制統一」の重大な危険性〉
合意された5項目のうち、第2項目にある「南の連合制案」および「北のゆるやかな段階での連邦制」については、ここで補足が必要と思われる。「南の連合制案」とは、最終的な南北統一のための過渡的段階として、それぞれが国家的な安全保障体制を維持しつつ限定的に「南北国家連合」を結成する案を指す。持続的な協力関係を通じて互いに十分な信頼を醸成し、安定的な関係を確立したうえで、最終的な権力統合作業に移ろう、というものである。盧泰愚政権以来、韓国内で公論として定着していた。
「北のゆるやかな段階での連邦制案」については、ここでは、その内容が南北の体制の違いを固定化することが目的であり、したがって分断体制を固定化するものであること、また、将来の「内戦」勃発が避けがたいことだけを指摘するにとどめる。これは、まったく違う2つの体制を「2政府1国家」として形式的につなぐ「連邦体制」を、実質的に「統一の最終段階」とするものである。要するに平壤政権が南の経済力に寄生する体制といえる内容である。
問題はそれにとどまらない。平壤政権の「連邦制案」は、南北相互がそれぞれ朝中、韓米との同盟関係を廃棄したうえで、それぞれの体制と政府を維持したまま形式的に単一の連邦国家となるというものである。韓米、朝中間の同盟関係による安全保障体制と戦争抑止力が失われてしまえば、「6・25動乱」の経験からして再び内戦がおこるのは避けられない。平壤政権の暴力的体質からして、それは決して杞憂ではない。
北の「連邦制案」は、民族滅亡のプランというべき危険なものである。
(韓国現代史研究家・金一男)

2014-06-04 3面
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