今年3月ごろから一部で失脚説が流れていた崔龍海・朝鮮人民軍総政治局長が、同職を解かれたことが明らかになった。病気療養のため表舞台から姿を消したとの見方は消え、また同氏が朝鮮労働党の書記になっていることから、軟禁説も消えた。昨年末の張成澤粛清から半年もたたないうちに、張に代わる「ナンバー2」と目された崔龍海も、わずか半年で権力の中枢から追われたことになる。その背後には党組織指導部の存在があるようだ。
| 張成澤粛清後に現地視察をした金正恩(右端)一行。中央が崔龍海、左端が黄炳瑞 | 崔龍海の代わりに総政治局長に就いたのは黄炳瑞。今年に入ってから軍の中で序列を上げ、4月15日には大将に、そのわずか10日後の26日には金正恩の元帥に次ぐ次帥となった。
北韓では金正日の死後、遺訓として金正恩を摂政らがサポートする集団指導体制がとられてきた。摂政とは金正恩の叔母にあたる金敬姫と、その夫の張成澤だ。しかし昨年末に張成澤は粛清され、金敬姫も表舞台からは長く遠ざかっている。
これについてある専門家は「労働党の組織指導部が背後でコントロールしている」と指摘する。組織指導部が張成澤と金敬姫を摂政の地位から退かせ、崔龍海も排除したと見ているのだ。崔龍海は父の崔賢が金日成と抗日武装闘争を行ったことから「白頭山の血筋」として重用された。その崔龍海は軍総政治局長を解任され、労働党の書記に就任。事実上の降格人事だ。
黄炳瑞は、もともと組織指導部の第一副部長の職にいたことが確認されている。また、「三池淵5人組」と呼ばれる、金正恩の側近グループにも名を連ねている。5人とも労働党所属だが、このうち組織指導部に属しているのは黄炳瑞と朴泰成だ。
三池淵5人組は、ほかの重鎮らと協議して張成澤の粛清を決めたといわれる。摂政を排除し、白頭山の血筋を追い落とした5人組と党組織指導部は、今後も大きな影響力を維持するものとみられる。 |