金成昱
金正日死後自由統一の機会を掴めるか掴まないのかは韓国の意志だ。仮に、韓国がこの機会を掴んだらどうなるだろうか? 北韓政権が崩れながら大韓民国も一緒に滅びるのか? 統合民主党の朴智元議員の発言を聞いてみよう。
「最近現政権は金正日委員長の健康と核の役割、こういう問題を以って北韓が直ぐ崩壊するという話を頻繁に言い、実際にそう信じているようです。実は米国にも私達が思うほど北韓専門家がそんなに多くありません。また、その方々は大体わが政府の意見を尊重しそこから情報を得ているため北韓崩壊論を相当信じています。
私はこのように話しました。ドイツの統一で我々が見たように、果たして北韓が崩壊した時われわれも生き残れるだろうか? 一緒に滅びる。だから交流協力を通じて北韓をあるレベルまで上げるのが必要だと言いましたが、未だこの政府は北韓崩壊論を強く信じ、米国をそのように説得しているということを私はこの場ではっきりとしておきます。(2010年2月24日国会図書館小会議室で「李明博政府の対北政策2年間の評価と提言」での発言)」
<龍歯を抜く統一費用、龍歯を打ち込む分断費用>
いわゆる「統一費用」が掛かり過ぎて北韓が滅びると韓国も滅びるという主張は、「太陽政策論者」らの間で強い。このような主張は、偽善的平和主義に「うなされた」自称「宗教家」の間でも横行する。
金大中と盧武鉉政権の時、「太陽政策」を以って自分の政治的地位を強化してきた勢力と一部の宗教人は北韓政権崩壊は災難と言い対北支援を力説してきた。金氏王朝(金朝)が滅びれば韓国に途方もない負担になるから、お金をあげてでも支えなければならないと言ったのだ。「太陽政策」は典型的な対北ポピュリズムだ。韓国人の利己心に訴えてしつこく生命力を維持して行く。
真実はこうだ。まず、統一は単純に「お金」に換算できる問題でない。つまり、統一は相当のお金がかかってもやらねばならない問題だ。「機会の希少性」のためだ。国内外のあらゆる条件が合ってこそ可能なことだから、機会がきた時掴まねばならない。機会が来たのに、お金を理由に見逃してしまえば、次の機会がいつくるか分からない。50年後か、100年後か分からないし、永遠に来ないかも知れない。何よりも、韓国人は北韓の同族を解放する機会を見逃したことへの道徳的責任を負わなければならず、また負うことになる。
ドイツは機会を逃さなかった。18年間西ドイツと統一ドイツの外相として、統一過程と統一後の外交を担ったハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー(*左写真)はこう話した。
「数十年間厚い雲がドイツの統一という星を蔽ってきた。私たちは雲がちょっと散ったその瞬間を逃さず統一の星を引っさらった。」
ドイツの統一は熟して落ちた果物でなかった。渾身の力で引っさらった勝負の結果だった。
二つ目、北韓政権が滅びても大韓民国が一緒に滅びはしない。統一費用が大きいと言うが、「分断費用」はもっと大きい。統一費用が大きいと言われるが、統一後北韓を新しく再建して生み出す「統一利益」はもっと大きい。それで、分断費用と統一利益を考慮しなかった統一費用は科学と言えない。
分断費用は、分断状態で、続けて、もっともっとたくさん支払わねばならない費用の全てを指す。莫大な国防費、天安艦爆沈や延坪島砲撃挑発で亡くなって将兵たちの命は代表的な分断費用だ。人の命をお金でどう換算できるだろう?
天安艦爆沈が起きた白翎島へ二回行った。海岸には凶悪な龍歯(*右写真)が数多く打ち込まれている。「龍の歯」のように見えるということで「龍歯」と命名されたこの構造物は、北韓軍が上陸できないように設置された。龍歯の間には哨所が作られて海兵隊兵士たちが昼夜で警戒している。西海の緊張を一目で見られた。
分断費用と統一費用はまさにこれだ。分断費用は北の攻撃を防御するために昼夜に払う消耗性支出の全てであり、統一費用は醜い龍歯を抜くお金だ。龍歯を抜くお金は「一時的に」掛かるだけだ。北韓を防御するため「持続的に」掛かるお金より遥かに少ないのだ。
龍歯を抜く統一費用と龍歯を打ち込む分断費用を理論的に整理した過去の記事を引用する。
《分断費用は「国が分断された状態から生じる一切の機会費用(opportunity cost)」と定義され、明示的費用(explicit cost)と暗黙的費用(implicit cost)に分けられる。前者は過度な軍事費支出をはじめ、大陸と草原に通じる通路が遮断されることで生じる運送費など不必要な物流費用と航空費用(ex. ソウルから東北3省への直線飛行ができなくて生じる費用)などが挙げられ、後者は天安艦爆沈と延坪島砲撃などによる人命殺傷など計測し難い費用、南北対峙による韓国経済の低評価(Korea Discount)と軍兵力を産業に活用できないため生じる費用など多様だ。
2010年12月国会立法調査処が発刊した「韓半島統一費用の争点と課題」という論文によれば、軍事費支出は適正水準より30~50%も過度に支出されている。これはGDPの1.5~2%に該当する。結局、自由統一後軍事費の減少だけでGDPの1.5~2%に達する。
自由統一後無くなる分断費用はこれで終わらない。境界地域の管理費用、在外公館や外交推進の重複費用、離散家族問題および有形無形の安保不安感、戦争恐怖感、北核問題などのためにもたらされる費用なども含まれる。
統一費用は時間が経ちながら消滅する限時的費用だが、分断費用は統一まで持続的に掛かる。2007年「国会予算決算特別委」が作成した、「統一費用と統一便益」という論文によれば、2015年、2020年、2025年、2030年にそれぞれ統一する場合、分断費用と統一費用は、毎年1兆3,123億ドルvs 8,577億ドル、1兆4,931億ドルvs 9,912億ドル、1兆6,837億ドルvs 1兆1,589億ドル、1兆8,886億ドルvs 1兆3,227億ドルが必要と推算した。一言で統一費用が多いというが、分断費用はもっと掛かるということだ。》
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