名分と実利の調和を
洪 韓国は今まで統一のチャンスを2度逃した。6・25戦争中と東西冷戦が終わった時だ。3回目のチャンスはどうするのか。「韓半島の1953年体制」(停戦体制)はすでに崩れかかっている。この現状変更の流れを掴まねばならない。統一こそ建国革命の完結ではないか。
梁 統一こそ独立の完結だが、容易でない。まず南北間の平和を確立せねばならない。平和が定着すれば統一は思いもよらない瞬間にくる。平和には、互いに攻撃意志を持たない平和、攻撃意志はあるが相手からより強力な報復があると予想する“恐怖の均衡"による暫定的平和、武力や暴力指向の者に弱い者が屈伏して得る不道徳な平和、がある。今韓国の政界の一部は、「屈従の平和」も良いものと錯覚して国民を騙し、屈従の平和かそれとも戦争かとの二者択一で選択を強いている。今の南北関係は恐怖の均衡による平和に近い。こういう暫定的平和状態では統一は論じ難い。真の平和への最大の障害は北側の誤った政策だ。
洪 統一ビジョンとその過程での国民の覚悟は何が必要なのか。
梁 福祉と統一は対立しない。韓国人は名分論に傾きがちだが、名分と実利の調和が必要だ。名分を無視せず実利を求めるべき | イ・チュングン | だ。韓民族の全構成員がより自由で、福祉が向上し、より安全に生きるため統一するという認識が必要だ。平和的に統一してこそこういう利益が得られる。韓国がやるべきは、平和的統一のため、平和のため、統一に備えたより果敢な行動だ。経済的負担が必要なら負担し、真の平和を確保するためには軍事的にも対応する。北の核は代価を支払っても必ず解体せねばならない。統一まで北韓の挑発を抑止するためには、強力な報復能力も持つべきだ。平和と軍備強化は一見矛盾するが、過渡的な段階では2つとも必要だ。統一は自由民主主義による統一が正しい。そういう統一を目指す人々がネットワークを作って活動せねばならない。
李 若者に韓国の総合的国力が世界で何位と思うかと聞くと、だいたい20位以下と答える。私は12位くらいに該当するといういろいろなデータを示して説明する。今の韓国人は韓国を未来の強大国にする責任がある。強大国への道で必ず克服するべき課題が統一だ。北韓を解放する大義名分もあるが、長期的に南北の若者に活躍の舞台を拡大する契機になる。統一すると北韓に教師だけで30万人が必要だ。韓国で教育を受けた人が行かねばならない。統一韓国の国力はイタリア水準か、少し頑張ればフランスのレベルまで行ける。そうなれば中国などは韓国を軽視できなくなる。米国も韓国をパートナーと考える。米国は過去には日本を中心にアジア戦略を組み、日中を互いに牽制させたが、統一韓国が米国をパートナーにすれば、世界8~9位の国力をもって世界3~4位の能力を発揮する国になれる。
中国はいずれ民主化
洪 統一には中国の動向がカギの1つになる。1950年冬の統一チャンスは、毛沢東の中国共産党の武力侵攻で挫折してしまったが。
李 韓国には中国が米国に代わって韓国の友人や同盟になれると期待する人々、主に左派が多い。彼らは金正日の死後、中国が北韓を呑み込むと考えている。だが、中国より遥かに強い米国が韓国の同盟国だ。中国が妨害しても克服する決意が必要だ。また、中国が強くなるほど米国はこれを牽制する戦略的必要性から韓半島の統一を期待するようになる。昨年の3月11日、駐韓米軍司令官が、「北韓で急変事態が起きたと米国が判断すれば米軍が北韓に入る」と言った。急変事態のとき北の核兵器や化学兵器への統制力が緩んで大量破壊兵器が流出する危険性が生じれば、米軍が掌握するという意味だ。北韓の混乱事態を韓国がうまく利用すれば統一に導ける。戦略的に韓国軍と米軍が北韓に入れば中国は介入できない。中国は「ウイグル問題」だけでも手を焼いている。
梁 韓国は中国との関係を「不可近不可遠」(遠からず近からず)に保たねばならない。中国に敵対的では経済面で問題が生じる。だからと言って、主体性なしで対すれば中国が韓国を弄ぶ事態になりかねない。中国はいずれ民主化する。なぜなら、今のまま経済成長を続けると共産体制の支配エリートが資本家になる。資本家になった共産支配者は自分と子孫の財産を保護するため私有財産制度を保護せざるをえなくなる。すでに部分的に相続制が導入され始めた。支配層が資本家になった共産主義は偽物だ。結局、自由を拡大せざるをえなくなる。それはまさに民主化だ。中国経済が高速で発展するほど民主化は早まる。中国が民主化する日こそ、韓半島が統一される日だ。だから、統一の将来を絶望せず、果敢に統一を追求し、遠からず来るという希望を持って備えなければならない。
李 それが中国のジレンマだ。今も問題が噴出している。中国が民主化すればウイグルやチベットが独立し、中国は連邦になる。人口13億を超える大国が連邦でないのが非正常でおかしい。
洪 来年から在外国民の選挙が実施される。公職選挙法218条は各論を見れば現実と矛盾し衝突する支離滅裂の部分が多い。信じられないほどずさんな法律だが一応やってみるしかないのか。
梁 法があっても、問題が多いなら延期すべきだ。地球上に敵に自国の運命に介入できる余地を許す選挙制度を採択した国はない。在外投票は北側が工作できることを無視して作った制度だ。北韓政権の影響を受けた人々が少数でも介入したら、韓国の政治的運命を変えることもありうる。仮に、大統領選挙が接戦になれば、海外で北韓の影響を受ける人々がキャスティングボートを握ることになりかねない。そういう危険を予想せず作った法を実施するのは無責任すぎる。海外国民にはまずいかもしれないが、今回は国会が投票を延期せねばならない。大韓民国の紀綱と安保の枠が破壊される可能性のある冒険をしてはならない。
<イ・チュングン>
1952年4月、ソウル生まれ。延世大学政治外交学科卒後、同大学院にて政治学修士課程修了。その後米国にて政治学と史学の博士号取得。世宗研究所外交安保研究室室長、民主平和統一諮問会議諮問委員など歴任。現在、韓国経済研究院外交安保研究室室長
<ヤン・ドンアン>
1945年8月、全南・順天生まれ。ソウル大学卒業後、中央大学院にて政治学修士。韓国政経研究所研究員などを経て、現在、韓国学中央研究院名誉教授、現代思想研究会会長。『大韓民国建国史』(05年、ヒョンウム社)など著書多数。2010年2月、大統領表彰 |