福島原発事故はまだ解決していない。今も放射性物質は放散され、再臨界する恐れすらある。クリントン米国務長官の来日直前に発表された工程表の見直しも避けられない。この事故について、1カ月過ぎた4月11日、原子力安全委員会は、事故当初から1時間あたり最大1万テラベクレル(1兆ベクレル)の放射性物質を放出していたと明らかにした。その翌日、事故レベルをチェルノブイリ事故級の「5」から「7」に2段階引き上げた▼2カ月過ぎた5月12日、1号機の炉心溶融を東電が渋々認めた。しかし震災の翌日、炉心溶融の可能性があると発表した保安院の中村幸一郎審議官は、国民に不安を与えたということで菅首相は同審議官の更迭を命じた。その翌日、西山英彦審議官が就任した▼早い段階から、東電及び政府は、1~3号機で炉心溶融が起きるかも知れないと危惧していたことになる。海外の専門家も同様な判断を行っていた▼外国人記者が東電などの会見から締め出されているという批判から、保安院が会見の場を設けたが、西山審議官の外国人記者向け会見は、実に異様だ。誰一人いない場で英語の説明が行われた。外国人記者は会見に行く必要がないと無視したのだろう。また炉心溶融を2カ月過ぎて認めた東電には、当事者としての責任感が伝わってこない。両者、事実やデータ伝達と現状分析、対応策や見通しの発表もないからだろう▼専門家の知見を伴った情報公開の徹底が求められる。国民や海外の不安と不信の根は、福島原発で何が起きているか、一向に見えてこないことにある。 |