金成昱
1.俳優文盛瑾(*左写真)の「民乱」に参加した人員が9万人になろうとしている。去年8月26日、文氏をはじめ、歌手の申海徹、映画監督の呂均東、曺己淑梨花女子大教授など65人の提案で始まったいわゆる「愉快な100万人民乱」運動には3月17日現在8万7,372人が加入した。100万人には遥かに及ばないが、住民登録番号をはじめ自分の身上を詳細に書くことになっているため侮る数字ではない。
文氏のいわゆる100万民乱(一揆)扇動は、インターネットはもちろん、全国各地で街頭キャンペーン、講演会など多様な形態で進行中だ。左派性向の日刊紙や地方紙、地方放送は全国で行われている「100万民乱」を重要に報道して雰囲気を盛り上げている。
文氏の100万民乱の目的は、来年12月の大統領選挙での左派の再執権だ。文氏は去年の8月26日、「100万人民乱プロジェクト提案書」を通じて、「李明博政府の失政と暴挙は一々取り上げる必要も感じない」、「市民の力で民主、進歩陣営を一つの政党に作ろう」と主張した。
文氏は、いわゆる民主・進歩陣営の統合政党のビジョンとして、「庶民経済の危機、民主主義の危機、南北関係の破綻を齎したハンナラ党政権を2012年に終わらせ、再び民主政府をたてること」を提示した。盧武鉉・金大中政府の時の南北関係や左派政策に戻ろうという主張だ。
文氏は2月19日のホームページに載せた文を通じて、「当初、われわれの100万民乱運動に対して『2万を超えられない』、『3万を超えるのは絶対あり得ない』など馬鹿にする話が多かった」と言ってから、「次の段階で10万会員を達成すれば『百万民乱の声』は誰も拒否できない力を持つようになる」と言った。
文氏は、10万人を超えると「本格的活動を展開する計画」と主張してきた。執行委員会・政策委員会・実務常勤組織を持っている「100万民乱」は、来月4月の再・補欠選挙、来年4月の総選挙と12月の大統領選挙など政治イシューが大きくなると過去「ノサモ」(盧武鉉を愛する人々の集い)のような形で爆発する可能性も排除できない。
2.文氏の「100万人民乱」扇動の成功は、民主党、国民参与党(以下「国参党」)、創造韓国党(以下「創造党」)、民主労働党(以下「民労党」)、進歩新党など左派政党の統合如何にかかっている。統合のためには、来年の総選挙で反李明博情緒の反射利益を得ることが確かな民主党の譲歩を引き出さねばならず、有力大統領候補である柳時敏が所属した国民参与党を説得せねばならず、従北主義と左傾理念に各々傾倒した民労党と進歩新党が民主党の「第2中隊」(*手先のこと)の役割に留まらねばならない。
左派の統合は、▲文氏などが主張する通り左派の単一政党を作る方法もあり、▲単一政党は作らなくても大統領選挙で左派の単一候補を出す方法、▲民労党・進歩新党・社会党などが先に統合した後、大統領選挙で民主党、国参党などと選挙連帯を試みる方法などがある。
野党はまだ左派統合を真剣に議論はしていないが、如何なる形であれ統合しなければならないという原則は同じだ。ただ、民主党と民労党は政党の統合を、国参党と進歩新党は選挙連帯を好むような雰囲気だ。
例えば、3月2日のCBS放送とのインタビューで、鄭東泳民主党最高委員は単純な選挙連帯でない「大統合論」を主張し、柳時敏国参党研究院長は「野党の大統合は難しいが、(民主党を除いた)進歩勢力の統合は望ましい」とし、国参党・民労党・進歩新党が統合した後、民主党とは選挙連帯のみをやればいいと主張した。
進歩新党の魯会燦前代表は、「臨時的でかつ一時的な、仮設政党の登録」を提案した。1997年の大統領選挙を前に作られた民主労働党の前身だった「国民勝利21」が仮設政党、つまりペーパー政党として始まったように、「選管委には党名で登録するが、内部的には選挙連帯で出馬しよう」というわけだ。反面、姜基甲民主労働党前代表は、「選挙の時は一つの政党を作ると言い、また分かれると国民が批判し兼ねない」として政党の統合に近い主張を言った。
左派統合を掲げた「100万人民乱」は、政治家たちも相当数加勢した状態だ。民主党の李仁栄、千正培、朴柱宣最高委員と安煕正忠南道知事や無所属の金斗官慶南道知事などが支持意志を表明し、鄭東泳最高委員は100万民乱とは別途に「単一政党」の必要性をインタビューなどで主張してきた。
3.左派統合の扇動は、これから加速化されるものと見られる。民主党の連帯連合特別委委員長の李仁栄最高委員は、最近「ハンギョレ新聞」とのインタビューで「今年の夏から執権可能な統合野党への要求が国民から高まるだろう」としながら、「100万民乱もこういう流れの中で現れたものであり、民主党内からも進歩民主の大統合の要求が多数になると期待する」と話した。(*右写真は去年11月13日公州での「100万人民乱」松明集会)
来る4月の再・補欠選挙も相当の影響を及ぼすものと見られる。今回の選挙は規模と関係なく意味が大きい。李明博大統領の任期が後半である上、2012年の総選挙と大統領選挙を前に行われる最後の選挙であるためだ。選挙の結果によっては与野の各党は来年の総選挙前まで指導部を含む党体制の全面改編をやらねばならない。
ハンナラ党が惨敗する場合、朴槿恵元代表を中心とする親朴系の声が勢力を伸ばし、親李・親朴の分裂は加速される。李大統領のレームダックが加速し青瓦台のハンナラ党への掌握力も落ち、与野党の大統領選挙走者に接近する人々が多くなるはずだ。情報機関や司正機関に務めている公務員はコネ作りに最も敏感な職群に属する。敏感な情報の流出が起き、これはいわゆる権力型不正暴露につながることもあり得る。
野党圏が惨敗すれば民主党は直ちに指導部の改編を議論せねばならないのはもちろん、左派統合に取り組めという圧迫に直面することになる。こういう圧迫は、野党が再・補選で大きく負けるほど高くなり、大きく勝つほど落ちる。
4.最近(3月14日)の世論調査(リアルメーター)によれば、朴槿恵元代表の支持率は相変らず最高値を示している。
朴槿恵33%、柳時敏14.8%、金文洙6.9%、孫鶴圭6.7%、呉世勳6.1%、韓明淑6%、鄭東泳4.8%、李会昌4.3%、鄭夢準3.6%、魯会燦2.5%の順だ。ところが、左派候補を全部合わせると34.8%で、朴元代表を抜く。ハンナラ党が支離滅裂になり、文盛瑾が扇動する100万民乱が成功すれば、左派の来年4月の総選挙での勝利、さらに12月の大統領選挙勝利につながることもあり得る。保守層が「朴槿恵大勢論」を不安に見守る理由がここにある。
左派の統合は果たして成功するだろうか? 去年6月2日の地方選挙は参考になり得る。民主党・国参党・民労党・進歩新党の大統領選挙での単一候補は、去年の6・2地方選挙のように変数でなく常数と見ることもできるということだ。
2008年の狂牛病乱動、2009年の龍山防火事件と双龍事態、2010年の天安艦爆沈と延坪島砲撃など左派の限りない偽りと扇動の前で、憲法と真実に基づいた価値闘争を放棄したハンナラ党が迎える2012年12月は惨憺たるものであり得る。問題はその災難の後遺症に遭う対象が素朴に生きてきたわれわれの普通の人々であるということだ。憲法と真実を知らせる価値闘争の切迫性が一層大きくなる3月だ。
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