現在危機的状況を迎えている福島第1原発からは、放射線および放射性物質が外部に放出されている。放射線にはアルファ、ベータ、ガンマの3種類があるが、遠くまで飛散するのはガンマ線だ。放射能とは文字どおり「放射線を発する能力があるもの」のことで、放射性物質(福島原発の場合はウラン)とほぼ同義と見ていい。 すでに報道にあるように、放射性物質はある意味で花粉のようなものであり、払い落とすこともできるし洗浄することもできる。花粉と違うのは、払い落としてもその場で数十年、数百年と放射線を発し続けることだ。その点で過度な心配は必要ないが、水道が止まっている被災地の方は用心してほしい。 1号機と3号機で水素爆発が起きたとの報道があるが、これは炉内にある燃料棒が化学反応を起こしているためだ。燃料棒は燃料であるウラン酸化物をジルコニア合金で覆っているのだが、そのジルコニアが水を分解して水素を発生し、ジルコニアは酸化物となる。そして発生した水素が爆発を起こしたのだ。 政府と東京電力は海水の注入をしているようだが、海水を注ぐと海水中の塩素によってジルコニアは塩素化され、ジルコニアの劣化を促進し、内部のウランがむき出しになる危険も促進される。それを防ぐために、既存の冷却装置を用いた海水注入でなく、放水車などで大量の真水を注ぐべきだ。第1原発は工業地帯にある。近くに工業用水があるはずだ。発電所近くの放射線量は健康に被害を及ぼすレベルといわれているが、防護服を着ていればまず問題はない。消防や自衛隊と協力して、原発を水浸しにすることが最優先だ。 現在想定される最悪のケースは核爆発、つまりチェルノブイリ原発事故と同様の事態に陥ることだ。仮に核爆発が起きた場合、原発から半径100㌔㍍以内に人は立ち入れなくなる。影響は300㌔㍍にも及び、首都圏も危険だ。汚染は何十年も何百年も続く。交通網は福島で遮断され、関東にも被害は及ぶ。それだけは絶対に防がなければならない。真水による冷却は海洋汚染を伴うが、最悪のケースを避けるためには致し方ない。既存の設備とシステムは機能していないので、既存の設備での通常のマニュアルどおりの冷却では追いつかなくなる。とにかく設備を水浸しにして冷却し核反応を穏やかにすることが最優先だ。 放射線は人体に影響を与える。中でも怖いのは遺伝子への影響だ。テレビに出てくる専門家は数字を出しながら「何マイクロシーベルトまでは安全」といっているが、すでに自然界ではありえない量の放射線が出ている。逆に瞬時であれば、数値以上の放射線を浴びても問題ない可能性はあるが、安全基準を数字に頼りすぎてはいけない。とにかく、放射線の数値だけでは、どれほどの被害が出るかはわからない。 政府には国民を信頼せよと言いたい。すでに世界中で報じられているように、ほとんどの被災者は冷静さを保って行動している。正確な情報を与えてもパニックにならないと信じて欲しい。政府やメディアへの不信こそ混乱を招く原因になるのだ。核爆発はいつ起こるかわからないが、起きずに解決できる可能性も十分にある。最悪のケースに陥り、更なる被害を拡大しないためにも、政府には被災地の住民を離れた土地でも治療し、収容できるような体制を整えてもらいたい。 とにかく、原発を大量の水で水浸しにすること。それが最優先なのだ。 |