朝鮮労働党は9月28日、44年ぶりに党代表者会を開いた。金正日の3男、正恩氏に権力を世襲させる3代世襲構図が、改めて明らかになった。
人事面では従来なかった党軍事委副委員長職が新設され、正恩氏は委員長(金正日)の下にある2人の副委員長の一人に選ばれた。さらに軍務経験のない正恩氏は「大将」の称号まで得た。
代表者会では人事のほかに規約も改められた。共産主義社会を建設するという党の目標が削除され、先軍政治を掲げる内容が加えられた。「継承性の保障が党建設の基本原則」との文言も入った。共産主義の表記は昨年の憲法改正時にも削除されており、事実上、北韓は「金王朝」への道に舵を切ったといっていい。
とはいえ、正恩氏は若く、党内での地位は安定しているとは言いがたい。そのためか、代表者会では党中央委員会政治局の機能が数十年ぶりに復活。金正日の実妹である金敬姫軽工業部長が政治局員の一人に新任された。政治局常務委員の一人である李英鎬・軍総参謀長とともに、政治面で正恩氏の後見人になると見られている。
李総参謀長は、正恩氏とともに中央軍事委員会の副委員長になっている。金正日が権力を継承した際の呉振宇のように、軍の掌握をサポートする役を引き受けるとの観測が支配的だ。
金正日は金日成からの権力継承過程で最低6年を費やした。しかし、今回「後継者」は突然表舞台にデビューした。
金正日が急いだのは自身の健康問題のためだろう。08年8月に脳卒中とみられる疾病で倒れた後、回復はしたものの健康状態には依然として不安が残る。今年初めて年2回訪中したのも、後継作業を急いでいることの表れと見られている。
代表者会のわずか2日後、正恩氏が写った写真が公開された。
公開された写真と動画から推定された正恩氏の体格は、身長167~170センチメートル・体重87~90キログラムほどになるという。韓国情報当局は、正恩氏は祖父の金日成(174センチメートル・90キログラム)と似た体格と見ている。昨年10月、毎日新聞が入手・公開した「尊敬する金正恩大将同志の偉大性教養資料」は「金正恩大将同志は父なる首領様(金日成)と将軍様(金正日)に瓜二つの先軍の英将」と表現していた。
似ているのは体格だけではない。耳の上を刈り上げ、残った髪をオールバック風にしているのは、金日成そっくりだ。太目の体格も、10代までは普通の体格だった正恩氏が意図的に祖父に似せるためにしたものと疑うこともできる。北韓には前例があるからだ。
金正日は74年に後継者として台頭すると、父に似せるためにわざと太ったことがある。また正恩氏は、黒い人民服を着ていた。金正日はカーキ色の人民服を着る。黒を好んで着たのは金日成だ。
北韓住民にとって3代世襲は受け入れがたいことだろう。そのため党は、若い3代目の“お披露目"にあたり、血統的な正統性と神格性を強調する必要を感じたに違いない。20代の正恩氏を、40代当時の金日成に似せたのも、緻密に練った脚本に沿った結果なのかもしれない。
朝鮮中央放送のアナウンサーも正恩氏を特別に扱った。名前が読み上げられた場面で、金正日・正恩父子の名前を読む時は正面を見ながら話した一方、ほかの人々の名を読み上げた時は視線を手元に落としていた。
正恩氏に人民軍大将の称号が与えられ、中央軍事委副委員長に任命した事実を未明に発表したのも広報の最大化を狙ったものと見られる。おそらく北韓が一番意識している米国・ワシントンはその時間、日中だったのだ。
3代世襲を明確に打ち出した北韓の金王朝。その未来は正恩氏の人民服同様、「暗黒のようだ」というのが大半の専門家の分析だ。
金正日が息子に譲った遺産は「核とミサイル、戦車と軍人」だけで、北韓の政治・経済・社会システムは正常に機能していない状態だ。
「人民に米飯と肉入りスープを腹いっぱい食べさせる」という金日成時代の課題でさえ実現できていない北韓で、3代世襲が順調に運ぶ可能性は高くない。(ソウル=李民晧) |
- 2010-10-06 3面
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