金成昱
▲上の写真は日本の箱根。下は北韓の三池淵と湖畔に建てた金日成銅像。箱根は世界的な休養地で、三池淵のような山地だ。北韓の再建は、金日成一族の神格化に利用される三池淵を箱根のような世界的休養地に開発することも含まれる。
今日の朝食勉強会で会った李・ハンゾン博士(国際政治学者)は、「統一費用の論理は金日成が作り出した扇動だ」と話した。
実際、統一費用の話はその淵源自体が模糊だ。北韓政権が80年代に「主思派」(主体思想派)の養成に成功するや、左翼たちが「統一念願」という用語を使い始めた。自分たちの文書に日付を記録する時も「統一念願何年何月何日」などと記した。例えば、1990年1月1日を、「統一念願45年1月1日」と書くやり方だ。
共産圏が1990年代に崩壊し、北韓経済が没落するやとんでもないことが起きた。韓国が北韓を吸収して統一できる国力を具えたことが確実になるや、「統一念願」がこっそりと消え、「統一費用」という言葉が登場したのだ。左翼たちと間抜けの日和見主義者らは、ドイツ統一後の西ドイツの経済難と社会葛藤を挙げて、漸進的統一を主張した。いわゆる「漸進的統一論」は、北韓体制を支持、支援、強化する「太陽の論理」へ自然に繋がった。
南・北韓の「統一費用」は、最小500億ドル(約58兆ウォン)から最大1兆5000億ドルがかかるという予想が出没した。今年の初め、ピーター・ベクというアメリカ人学者は、「北韓の所得を韓国の80%のレベルまで引上げるためには、今後30年間2兆~5兆ドル(約2300兆~5800兆ウォン)の費用が掛かるはず」と分析した。韓国国民1人当り4万~10万ドル(約4600万~1億1500万ウォン)の「統一費用」を分担せねばならないという要旨だ。
李春根博士(梨花女子大)の説明によれば、ピーター・ベクの結論は、「驚くほど粗雑な計算」だ。いわゆる「統一費用」は、Inputしたカネだけを計算したものであり、Outputを抜きにしたものだ。北韓の再建費用、すなわち北韓に工場を作り、道路を開き、港を作るカネだけを計算し、その後稼げるカネは考慮しなかったものだ。投資をしてから得られる利益は抜いてしまったから、言葉通り出鱈目な計算だ。
特に、北韓の地下資源は2009年国会に報告された金額だけでも6718兆ウォン。いわゆる「統一費用」を相殺して余る。6718兆ウォンに達する地下資源に5800兆ウォンの投資、つまりInputが投入されれば、どれ程途方もない利益とOutputが創出されるだろうか? 天文学的という表現では足りない。想像を超えるはずだ。ゴールドマン・サックスが、自由統一された韓国の2050年のGDPを世界2位と計算したのはこのためであろう。
北韓の所得が南韓の所得の80%になるというピーター・ペクの「統一費用」の基準も非科学的だ。 100%を基準としない理由もないだけでなく、北韓をOO%まで引上げるという仮定は、北韓住民が何の仕事もせず、南韓住民が食べさせるという仮定だ。世の中にこんな憶測がどこにあるのか?
北韓に自由、人権、法治、民主主義のような普遍的体制を導入する自由統一は、慢性的安保不安による心理的苦痛や、韓国企業のいわゆる「コリア・ディスカウント(Korea Discount)」など各種の分断費用を吹っ飛ばしてしまう。統一過程で掛かるカネは、今よりずっと自由で、強く、安全な国を作るのに使う交通費のようなものだ。「統一費用」云々する人々は、豊かに暮すのにも交通費が惜しくて休暇に行かないという怠けたケチン坊と同然だ。
何より「統一費用」は、今も凍死し、飢え死にして、殴られて殺される2300万の北韓同胞を救うカネだ。われわれ自身の良心を救うカネだ。「統一費用」の論理は、だから偽りで、偶像であり、原始的な利己心に過ぎない。
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