ロ・ジェワン(自由アジア放送記者)
国連の対北制裁が、北韓軍部の外貨稼ぎに少なくない打撃を与えています。
最近モンゴルで金鉱開発権を獲得した「人民軍」の外貨稼ぎ貿易会社が、採掘に必要な装備と設備を日本から確保しようとしたが失敗に終わったことが分かりました。
北韓軍部の外貨稼ぎの実態をソウルからロ・ジェワン記者が報道します。
北韓の外貨稼ぎの機関や団体は多様です。基本的には、中央党が運営する会社があり、内閣の貿易省傘下の貿易会社、そして軍部が運営する会社に区分されます。
本来は貿易省が対外貿易を専門担当する国家機関ですが、1990年代中盤以後からは各機関が独自の事業を行ってきたと知られています。特に、「先軍政治」が強調されてから、軍部の外貨稼ぎが貿易省を抜き始めました。軍部の貿易は各種特典を受けるためです。
例えば、貿易省は事業推進の時、人民保安省や保衛司令部、そして検察所などの顔色を窺わねばなりませんが、軍部の会社はこれらの顔色をうかがう必要がありません。文書一つの批准(許可)を受けるのも貿易省傘下の会社より容易です。
人民武力部は「強盛総会社」、国家保衛部は「シンフン総会社」、そして人民保安省は「ロクサン総会社」が代表的な軍部の外貨稼ぎ事業体です。
1994年頃まで被服や食料品などを国家が全て責任をとり、軍隊に保障(供給)しましたが、その以降は軍部が自主的に物資を調達してきたと外貨稼ぎの働き手だった脱北者たちは話します。
脱北者の黄マンユ氏の証言です。
黄マンユ:1994年以前は、人民武力部傘下に貿易会社が一つだけありましたが、その後金正日国防委員長の指針が通達されて軍団ごとに貿易会社を設立して不足した肉類、米、油などを中国から輸入しました。
特に、人民武力部には外貨稼ぎ専門の第25局があって組織的に管理すると知られています。「強盛総会社」がまさに25局傘下の貿易会社です。「強盛貿易総会社」の社長が誰なのかは確認されていませんが、階級は上将級と伝えられています。
海外支社も運営している「強盛貿易総会社」は、会社傘下に大佐、上佐が率いるいくつもの部署があり、各部の下はまた少佐、中佐が指揮する会社があります。もちろん、各部の傘下の会社は外貨稼ぎの重点品目を持っており、規模によって支社長を置く場合もあります。
「強盛貿易会社」はこの前モンゴルで金鉱開発権を獲得した後、日本と合作して事業を推進したと伝えられました。「強盛貿易総会社」が日本側と手を握ろうとした理由は、採掘に必要な装備と設備が不足したためと推定されます。しかし先月の協議の過程で霧散したと伝えられます。
北韓事情に精しいある中国人は、「先月、事業議論のため日本から慶応大学の経済専門家4人が中国の瀋陽にきて、強盛貿易関係者たちに会った」と言い、「ところが、日本の経済専門家たちも北韓との取引きを禁ずる日本の強力な貿易制裁に負担を感じて放棄したと聞いている」と話しました。
「後で中国企業と提携して推進しようとしたが、持分問題で失敗した」とこの消息筋は明らかにしました。
このように最近北韓の外貨稼ぎは国連の対北制裁で困難に陥っています。特に日本の貿易制裁措置は、北韓軍部に大きな打撃を与えています。
北韓の対日本主要輸出品だった無煙炭と松茸、ウニ、ワタリガニ、アサリなどの輸出が封鎖されたためです。全てが北韓軍部が管理する品目です。
韓国内の脱北者知識人グループを率いているNK知識人連帯の金興光代表です。
金興光:日本への輸出ができなくなって、中国やマレーシア、台湾へ輸出されていますが、過去日本から稼いだ外貨と比較すると半分にもなりません。
北韓軍部が外貨稼ぎを通じて稼いだ収入の30%は、無条件「党資金」として納めなければなりません。 もちろん、金正日誕生日や党創建記念日の時納めるお金はここに含まれていません。北韓では外貨稼ぎの遣り方だけは徹底して資本主義方式を真似しています。しかし、収益に対する分配構造は社会主義方式になっていて不正と腐敗の温床になってきました。
人民武力部の外貨稼ぎ働き手出身の脱北者のチョ・ポンイル氏です。
チョ・ポンイル:(北韓では)「外貨稼ぎ」、「不倫稼ぎ」、「教化稼ぎ」という言葉があります。外貨稼ぎの責任者になれば、十人の中で九人が監獄行でしょう。
外貨稼ぎ会社の社長の場合、一つの会社で3年以上在職できないという話があるほど、3年経てば政治犯に逮捕されるかその地位から降ろされるといいます。
一定の地位に就けば不安感を感じますが途中で辞める人はいません。既得権が放棄できないためです。
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