黄長燁
北韓に対する影響力で無能な中国-[黄長燁の民主主義講座]
アメリカとの対話の結果を見てから「6者協議」に参加すると宣言した金正日の目的は、他でもなくアメリカとの対話そのものです。また中国との関係では「6者協議」への参加自体が目的です。
金正日がアメリカとの対話を通じて狙うものは自らの値打ちを上げることです。具体的に説明すると、世界最強国のアメリカを対象に自分が会談しているのを誇示することであり、だからアメリカの女性記者らを拉致して時間を稼いだのです。「6者協議」に参加すると宣言したのもアメリカとの対話のための手段です。
米国だけでなく中国も「6者協議」に関心を持っています。中国が「6者協議」に執着する理由は、金正日が国際社会に「核脅威」を続けることによって、北の核武器の廃棄を望むアメリカと韓国、日本が中国の役割に期待し、中国に対する依存度が高くなるからです。
こういう中国の意図通り、現在アメリカと韓国や日本は、中国が北韓に影響力を行使することに大きな期待をかけ、事実上中国に依存するようになっています。ところが、現実は違います。中国は北韓に対して影響力を行使できません。
もし、影響力を行使できたら、30年間も北韓で中国式の改革・開放が引き出せなかった理由がありません。「北・中同盟」が維持される限り、中国は北韓に対して如何なる影響力も行使できません。金正日が中国の要求を頭から拒否していますが、そのようにしても中国が北韓を軽く対することができないという事情を金正日自身が知っているからです。
アメリカはひたすら北の核武器の廃棄のみを求めますがそれは不可能です。
金正日は決して核武器を放棄しません。戦争を起こして、国際社会が北韓による南韓の吸収統一を承認する時はじめて核武器を廃棄するでしょう。
一つ付け加えると、金正日は米軍の南韓からの撤収を前提とした場合、核武器を使わなくても南韓との戦争で勝利するという確信を持っています。事実、戦争が勃発すれば、金正日の意図通りになる可能性が高いです。
足りない物資に対する中国の支援さえ保障されれば北韓は全てのものを戦争に集中させられますが、南韓はそれができません。南韓の経済が発展はしましたが、かと言って戦争で必ず勝利するわけではありませんし、むしろ敗れる憂慮が高いです。兵力の規模でも北韓が圧倒的に多く、武器も南北間の格差はそんなに大きくありません。
また、南韓がもし北韓に核攻撃を加えるとしても、北韓も南韓に核攻撃を加える能力を持っています。こういう場合、戦争で勝利するためには水素爆弾を使わねばなりませんが、これは北韓全地域が灰になるのを意味するため事実上使用できません。水爆は、第2次世界大戦当時投下された広島型の原子爆弾よりも約1千倍も強力な威力を持っています。
水素爆弾が使われると、罪のない2,300万の北韓住民まで犠牲になります。このような虐殺は南韓も反対するはずで、中国やロシアはもちろん、全世界がいっせいに反対するでしょう。このように全世界から糾弾される水素爆弾を利用した攻撃はあり得ません。
結論を言えば、韓・米・日の立場自体が間違っています。この3国は、北韓の人権蹂躙を批判はしているものの、同時に原爆さえ廃棄すれば体制を維持してあげると金正日に約束しています。
これは決して民主主義に立った解決方案ではありません。結局、人権問題の解決と北韓の民主化は後まわしにされ、北韓による核攻撃だけを心配して北側と対峙しているだけです。実際には金正日が核武器を使用できないのに、です。
このように「北核」の廃棄を対北政策の核心に捉えている米・韓・日は、北核の条件付き廃棄において中国が北韓に影響力を行使できると考えますが、先ほど触れたように、これは実現可能性がありません。問題を根本的に解決する方案は、まさに北韓と中国の同盟関係を瓦解させることです。「北・中同盟」を瓦解させれば、全てのことが解決できます。中国は解決の鍵になれません。
冒頭で指摘しましたが、自国の国際的地位を高めるためには、金正日が核脅威を加え続けてくれなければならないのが中国の立場です。そうしてこそ、米・韓・日が中国に依存することになるからで、したがって、中国は「北核」廃棄のための国際社会の実質的な対北圧迫に反対しています。
中国は自国の地位を高めるため「6者協議」が是非必要です。投資した以上の効果を上げるから、北韓に2千万ドルを無償で支援するとしても惜しまないのが中国であり、だからアメリカによる対北制裁を抑制しながら、北韓を宥めてこそ問題が解決されると時間を引延ばしています。
「北・中同盟」を瓦解させるためには金正日を思想的、外交的に孤立させる方法しかありません。
ところが、アメリカと韓国、日本などの関連国がそれを疎かにしているのが現実です。われわれは今の姿勢を変えて、思想的・外交的活動を展開することで全世界の世論を喚起させて、金正日体制を孤立させ、北韓住民を覚醒させねばなりません。
このためには無意味な対北支援を中断し、中国と自由貿易協定(FTA)を結ばねばなりません。仮に、この過程で1~2億ドル程度損をしても、これは金正日を孤立させるための投資と考えなければなりません。
さらに、中国だけでなく、タイなど可能な限り、多くの国々と自由貿易協定を結ばねばなりません。タイとの自由貿易協定締結が重要な理由は、タイを通じて金正日の影響力がまだ及んでいる東南アジア地域の世論を喚起させられるからです。
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