趙甲済
北韓政権を軍事的に崩壊させるためには戦争をやらねばならない。これは狂気の沙汰だ。経済封鎖によって独裁政権を倒した例もない。金脈さえ断つと金正日が崩れると考えるのは真面目すぎなことだ。すべての共産独裁政権は内部の変化から崩壊した。内部崩壊への誘導、これが銃弾一発撃たずにできる平和的自由統一への道だ。
金正日がミサイルを撃てば、われわれは「風船(ビラ)」を送れば良い。「風船」で入る情報・お金・愛が、金正日体制を内部から変化させる。李民馥「対北風船隊長」は、今年に入ってすでに1700万枚の伝単(ビラ)を約270個の風船で飛ばして北の地へ送った。
テポドン・ミサイルを一発を撃つ度に、全国民が1人当り一個ずつの風船(製作費12万ウォンでビラ6万枚、1ドル紙幣100枚を入れ)を送り始めると、金正日政権は遅くとも数年内に崩れる。毎日、空から「月給」が落ちれば(1ドルが北韓の闇市では3000ウォンで、労働者の月給に相当)、北韓住民たちは次第に「朝鮮労働党」を見くびるようになるだろう。
愛の風船で憎しみの集団を倒した歴史的先例がある。下に参考記事を紹介する。
共産主義を滅亡させた戦略文書「NSC 68」
-軍事力は盾、人権と自由は槍だ。共産主義は妥協が不可能な人間と自由の敵であり悪だ。
「NSC 68」という有名な文書がある。1949~50年の間に立案されたホワイトハウス安保会議(National Security Council)の戦略文書だ。これを起草した人は、ポール・ニッツ当時国務部の政策企画室長だった。アチソン国務長官の後援を得て作成され、トルーマン大統領が署名したことで、アメリカの対ソ基本戦略に採択された。この文書はその後の冷戦戦略と歴代米大統領の思考に大きな影響を及ぼした。「NSC 68のおかげで米国は冷戦で勝った」という話があるほどだ。
この文書が作成されていた時、トルーマン大統領は軍費を縮小し、国内福祉分野に対する投資を増やそうとした。ポール・ニッツは「NSC 68」で、ソ連が西欧文明を破壊しようとする悪の勢力だと断定した後、対ソ強硬論を主張して軍備増強を要求した。トルーマン大統領は、1950年4月7日この文書に署名はしたものの、軍備増強建議に対しては冷淡だった。
ところが、二ヶ月後「6.25南侵」が起きた。NSC 68で、ソ連の膨張主義を予言したポール・ニッツの分析が的中したように見えた。トルーマンは、直ちに次の会計年度の国防予算を三倍に増やすように指示した。「NSC 68」と「韓国戦争」のこのようなタイミングが、アメリカの本格的な冷戦戦略を出帆させたという解釈が主流になっている。本格的な「冷戦」は、韓半島で始まり、韓半島の統一はその冷戦を最終的に終息させるはずだ。
ソ連共産主義は、西欧の個人主義とは両立できない非文明的、非西欧的、非キリスト教的、反個人主義的な異端勢力だというのが、この文書が冒頭から強調している道徳的観点だ。レーガン大統領が、ソ連を「悪の帝国」(Evil Empire)と呼んだ根拠がここにある。ポール・ニッツは、ソ連の侵略路線から防御すべき価値を、個人主義と自由に置いた。
<自由な社会は個人を(手段でなく)目的と見る。個人の自律と自重さえあれば、個人と個人の権利は衝突なしで共存できる。このような自由思想から、驚くほどの多様性と深い寛容、そして法治の伝統が生じる。これが自由社会の統合性と活力を作るものだ。>
ポール・ニッツは、また「共産主義はこのような長所を悪用して、わが社会を分裂させ、人間の非理性的な側面を扇動して社会を破壊しようとする、絶対に妥協のできない価値観だ」と断定した。
<ソ連共産主義の価値観ほど、われわれと和解の不可能なものはない。われわれを破壊しようとする執念がそれほど強い理念もない。わが社会の危険かつ分裂的な性向を悪用するにおいて、それほど有能な理念もない。人間の本性に内在した非理性的な面をそれほど技術的に強力に扇動できる価値観もない。>
「NSC 68」は、共産主義者たちが好んで利用する「平和」を欺瞞だと断定した。
<ソ連共産党全党大会が定義したように、「平和政策」というのは、「資本主義と戦う時に使う、より有利な方式」であり、非共産主義国家を分裂させ、麻痺させるための装置だ。彼らのいう平和は、ソ連の政策に対する完璧な承服を意味する。>
このごろ南・北韓のいんちき左翼らが使う「平和」の意味も同じだ。韓国社会を分裂させ、自由守護の意志を麻痺させるために使うものであり、北韓政権の対南赤化戦略に対する抵抗力を殺ぐための言葉だ。
「NSC 68」は、自由世界の弱点を指摘した。それは、避けられない最後の手段としてでなければ戦争や暴力的手段を選択できないという点だ。自由な社会で許される暴力の使用は、二つの場合だ。ある個人や集団が他の個人たちの基本権を破壊しようとする時、また他の社会が自由社会に対して彼らの意志を強制しようとする時だ。したがって、対ソ戦略も、自由世界のこういう弱点を直視した上で、彼らの軍事的冒険主義とは違う方法で行われるべきだと言った。
彼は、自由思想の優越性を誇示することで、「ロシア人民をわれわれの味方にしなければならない」と言った。ニッツは、「ソ連体制の本質的な性格を変えることが勝利の近道だ」と主張した。このような本質的な性格の変化が、外部から強要されるのではなく、「ソ連内部の自主的な動力によって為されるようにするのが最も効率的だ」とニッツは強調した。彼は、軍事力を盾と見て、人権を槍だと解釈したのだ。アメリカの軍事力を増強してソ連の侵略を阻止した後、自由世界の強点である人権と自由を武器として、全体主義の反人間性を暴露することで、敵の内部で分裂が起きるようにすれば良いということだ。
NSC 68は、報告書の終わりでいくつかの政策建議をしている。
*ソ連の影響力と国力を縮小させる。
*ロシアが国連憲章の国際的行動規範に従うようにする。
*ソ連内部で反政府運動が起きるように勧奨する。
*軍事的対備態勢を強化する。
*米国の保安態勢を強化して、スパイ・怠業・反逆を阻止する。
*経済力を強化する。
*非ソ連圏国家らが米国に友好的な態度を取るように誘導する。
*ソ連権力層の中で緊張や分裂が起きるように誘導する。
*米国市民に安保脅威の状況を知らせ、警戒心を持つようにする。
上の建議事項の中で、ソ連を北韓に、米国を韓国に変えればそのまま韓半島の自由統一戦略文書になる。
マーガレット・サッチャー前英国首相は、「冷戦で西側世界が勝ったのは、真実・正義・自由を護り抜いたという意味だ」と話したことがある。チェコの反共指導者のハベルは、「共産主義の属性は偽りと憎しみだ。こういう悪に対しは、真実と愛が薬だ」という趣旨の話をした。
このごろ金正日政権を揺るがしている「対北風船送り」の力は、真実と愛とお金を伝えるという点だ。風船にぶらさがった伝単(ビラ)とお金が、金正日政権の弱点である偽りと憎しみの鎧を溶かす。人類歴史上、最もおかしな北韓政権は、最も不思議な方法で崩れるはずで、「風船送り」に5000万の国民が参与すればそうなる。
大韓民国憲法は、「北韓労働党政権の平和的解体」を国家意志として盛っている。数十万の風船が、真実と愛とお金を抱いて空を真っ黒に覆い、北へ飛んで行って、平壌上空で弾ければ、月給袋と同じの1ドル札が空から落ちる。北韓住民たちだけでなく、保衛部員や警察要員らも拾いに回るだろう。
北側が、「拉致した人や国軍捕虜を全員帰すから、どうか風船は送らないように」と出るかも知れない。
国防部は、休戦ラインの対北放送も再開しなければならない。金正日政権は休戦ライン上の相互宣伝放送を中断することに合意した時結んだ約束を守らなかったから、われわれは「合意の失効」を宣言し、真実を伝える放送を再開する必要がある。
このような「風船」と放送が、まさに「北韓住民直接助け合い」だ。金正日が放棄した北韓同胞を南韓同胞が責任をもって食べさせる道だ。これが平和的方法による自由統一への道であり「朝鮮労働党独裁政権の平和的解体」という国家意志を実践する道でもある。この愛の「風船作戦」は、南韓の左翼らを反民族的・反人道的勢力に烙印するのにも大きな役割をなすだろう。1石3鳥の戦略だ。
|