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2008年09月03日 00:00
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朝鮮半島に差す大国中国の影 
急がれる「ポスト金正日」見すえた対応策
緩衝地帯としての北朝鮮
 
 熱戦が続いた北京五輪だが、純粋に楽しめた人はどれだけいただろうか。世界中から非難を浴びた“聖火護送”から開会式での過剰演出、はては観衆の国粋的応援態度に至るまで、中華主義の一面を見せられているようだった。
 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は「中国の南進戦略の最終目標は、朝鮮半島全体の支配にある」と指摘する。櫻井氏の指摘を引用せずとも、中国にとって北朝鮮がどのような存在であるかを考えれば察しがつく。
 北朝鮮は、韓米をはじめとする自由主義勢力と、中国共産党政権の緩衝地帯になっている。北朝鮮で不測の事態が発生すれば、中国はあらゆる形で韓米が半島北部に進出するのを阻止するだろう。実際、中国は相当な犠牲を払いながらも、朝鮮戦争で北朝鮮地域への影響力保持に成功している。
 有事の際の、「自動介入」条項などを盛り込んだ朝中条約は、中国の介入を構造的に保障するものだが、米国も中国の介入に同意する可能性がある。中国の介入により、北朝鮮が核を放棄するという前提が必要になるが、「核を持った金正日政権より、核を持たない親中政権の方がましだ」と米国が判断すれば、中国の介入を歓迎するだろう。朝鮮半島における日本の“指導的地位”を認めた桂・タフト協定のような合意が、米中間で結ばれるかもしれない。
 中華主義の南進により、北朝鮮が極端に親中化することは、韓民族全体に不利益をもたらす。
 親中政権が中国式改革・開放を導入して情報が行き交えば、北朝鮮住民は38度線に押し寄せるに違いない。親中政権は、体制維持のため、今まで以上の住民統制を行うだろう。それでも大量に発生する難民を、韓国が受け入れる体制は整っていない。
 親中政権が核放棄をする場合、北朝鮮は、「朝鮮半島平和維持費」などの名目で、必要以上の外貨・食糧支援を要求してくることも憂慮される。
 地政学的側面からも不利益を指摘できる。
 朝鮮半島は、「大陸勢力と海洋勢力の狭間」といわれる。朝鮮半島北部に中国の傀儡政権が誕生すれば、中国は東海(日本海)から大洋に進出する足がかりを得ることになる。力の均衡は崩れ、中国と日本・米国・オーストラリアなどとの対立は深刻化するだろう。
 朝鮮半島は、大陸勢力の最前線であると同時に海洋勢力の足場になり、旧大韓帝国末期のような激流に巻き込まれるかもしれない。
 中継貿易地としての韓国の価値が失われる可能性もある。
 地球温暖化によって北極海の氷河がとけ、いわゆる「北西航路」が開かれている。ヨーロッパから北西方向に進み、北米大陸の北側からベーリング海峡を通って北太平洋に抜けるこの航路を経由すれば、中国とヨーロッパとの交易はより活発になるだろう。
 韓国は、ポスト金正日体制づくりを中国に先駆けて誘導しなければならない。平和的で自主的な自由統一を急ぐべきだ。
 南北の体制と理念の対立は、自由民主主義と独裁主義のどちらかが倒れるまで終わることはないだろう。この戦いに加勢してくれるのは、自由民主主義という価値を共有する米国と日本だ。米日との協調こそ、朝鮮半島への中華主義進出を防ぐ術である。

(ソウル・金成昱

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