趙甲済
金正日が軍部隊を訪問した写真を無理に公開した北朝鮮政権は、金が本当に起動出来ない程の病気である事実を告白した結果になった。その写真は、8月中旬以前に撮られたのが確実だからだ。このように操作をやってこそ住民を統制できるほどであるから、切羽詰っているようだ。
金正日の重病説以後、北朝鮮政権の意志決定は、党中央委の行政部長である張成沢(チャン・ソンテク)によって主導されるような兆候が見える。張は、金正日の妹の夫だ。「行政部長」は、軍隊と内閣を除き、国家安全保衛部(情報・捜査機関)、人民保安省(警察)、そして監察機関を統制する。張は、権力層の中で評判が良い方で、経験も多い。金正日の信任も強い方だ。
金正日が日常的な業務を以前のように執行できないため、秘書局と党、そして党の軍事委員会、内閣の機能が大きくなりつつある。戒厳司令部格の国防委員会は、委員らが象徴的な人物たちであり、政策手段を持った人が少ない。金正日の後押しがなければ実権を行使する方法がない。危機の時は、執行機関を掌握し、権力ゲームに加わる人が実権を持つ。
朴正煕大統領が殺害された「10.26事件」の直後、軍内の情報網を掌握した国軍保安司令官の全斗煥将軍が、実権者として登場できたのは、「ハナ会」の人脈と保安司という組織を持っていたからだ。
金正日の三人の息子、金正男や金正哲、金正雲は重要な役割をなせずにいる。金正男は中国に滞留する時間が多いが、それだけ転換期においての役割が減る。金正哲や金正雲も実権を行使するほどの組織を持っていない。
張成沢は、2004年、金正日からの牽制を受け、2年ほど謹慎したことがあった。にも拘らず、要職に復帰し、彼の兄弟らは軍の将軍だ。病床の金正日は、息子らの面倒を妹弟にお願いすべきかも知れない。張は、黄長燁先生とも親せきの間柄だ。黄先生は、かなり以前から、金正日の身辺に異常が生じれば張が実権を握るだろうし、党が重要な役割をなすと予測した。
問題は、張成沢が北朝鮮の鄧小平になれるのかである。金正日が無力化されてからこそ、可能だろう。金正日が無力化されれば、核の放棄も、中国式の改革・開放も可能で、そのような試みを契機にして、北朝鮮が本質的に変化するだろう。
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