韓日両政府は、若者が外国で働きながら長期滞在できる「ワーキングホリデー」制度に関し、これまで1回に限定されていたビザ(査証)の再取得を認めるとした。8月23日に行われた石破茂首相と李在明大統領による韓日首脳会談で合意した。人的交流の拡大を通じて両国の友好と相互理解がより深まることが期待される。
1999年に始まった日本と韓国のワーキングホリデー制度は、両国の青少年が相手国の文化や生活を体験しながら、観光や就労を通じて交流を深める機会を提供してきた。
ワーキングホリデービザは、18歳から30歳(一部25歳まで)の若者を対象に、1年間の滞在を認め、観光を主目的としつつ生活資金を補うための就労を許可する制度だ。これまでは年間の発給上限は韓国側が1万人で、1人1回のみの取得が可能だった。だが、8月23日の韓日首脳会談での合意に基づき、10月からビザの再取得が認められることになる(詳細は未発表)。
これにより、若者は最大2年間(2回×各1年)相手国で滞在が可能となり、さらなる交流の機会が拡大する。
ビザの2回取得が可能になったことで、若者はこれまで以上に長期間にわたり、相手国の文化や言語に触れる機会が増える。韓国語や日本語を学びたい若者にとって、継続的な学習と実践の場が得られるのは大きな利点となる。ワーキングホリデービザは、単純労働を含む幅広い就労が可能なため、アルバイトを通じて現地の労働環境を体験できる。2回目の滞在では、初回で築いたネットワークやスキルを活用し、より専門性の高い仕事や長期的なキャリア形成に挑戦できる可能性がある。企業側にとっても、柔軟な労働力を確保できるなどメリットが大きい。
再取得のマイナス面は
人的交流の拡大は、両国の相互理解を深める基盤となる。過去にワーキングホリデーを通じて日本を訪れた韓国人や、韓国を訪れた日本人が、それぞれの文化を肌で感じ、友好意識を高めてきた。ビザの再取得が可能になることで、こうした交流の機会が倍増し、特に若者層における韓日の絆が強化されることが期待される。
過去には、ワーキングホリデービザを悪用した不法就労や不適切な活動が問題となったケースが報告されている。審査の厳格化や管理体制の強化が必要となる。また、ビザの発給上限が年間1万人と定められている中(韓国は正式に公表、日本は推定)、2回目の申請者が増えることで、新規申請者にとってビザ取得の競争が激化する可能性がある。
2023年にワーキングホリデービザで日本を訪れた韓国人は約7000人に上り、全体の30%以上を占めるなど人気は高い。
ワーキングホリデーには、渡航費や初期生活費、健康保険加入などの準備が必要だ。2回目の滞在を希望する場合、これらの費用が再度発生するため、経済的負担が増す可能性も。
日本のワーキングホリデーを利用した崔さんは今回の決定について次のように話す。崔さんは14年前にワーキングホリデーで来日し現在も日本で生活している。
「機会が拡大することは良いことだと思う。だからこそ、より良い経験にして欲しい。そのためには準備が必要。日本に来る前に日本語を一定レベルまで学習することを勧めたい。貯蓄もある程度は必要。なんとかなると思い来日し、なんとかなってはきたが、もっと効率よく機会を生かせたはずと思う」
韓国のワーキングホリデーを利用した吉村さんは、目的意識を持つことが重要だと語る。
「いま、大学卒業資格があれば韓国の会社に就職し、韓国で働くことはそれほど難しいことではない。韓国語を勉強したいのであれば語学留学をすればいい。ではなぜワーキングホリデーを利用するのか。韓国文化に興味がある、KPOPや韓流アイドルが好きだなどの理由はあるだろうが、韓国で生活する目的を自分なりに明確にしないと”遊学”に終始してしまう可能性もある」と言う。
首脳会談では、少子化対策や地方創生といった共通課題での協力も議論されており、ワーキングホリデー制度の拡充はこうした協力を後押しするものと期待されている。若者が互いの社会課題を学ぶことで、経済や文化だけでなく、政策面でも連携が深まる可能性も期待できる。
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