最初は28番歌だ。
春過 而 夏來良 之
白 妙 能 衣 乾 有
天 之 香 來 山
春は去り、夏が来るように言わなきゃ。
白い服を着た民と立派な官服を着た臣下たちは
きっと服を洗って干していて
天香具山に来て天智天皇を迎えるべし。
娘の鸕野讚良が父親の天智天皇の魂を近江国から迎えている。一般の民と貴族たちは服を洗濯して着て、天香具山に来て迎えよという内容だ。娘は父の功績が夏の太陽のように輝くようにすると誓っていた。
天香具山は大和三山の一つである香具山である。大和三山とは香具山、畝傍山、耳成山のこと。橿原市を代表する山だ。古代日本の神山だった。
29番歌だ。
玉手次畝火之山乃橿原乃日知之
御世從阿礼座師
神之盡樛木乃弥継嗣尓天下所知食之乎
天尒満倭乎置而青丹吉平山乎超
何方御念食可
天離夷者雖有石走
淡海國乃樂浪乃大津宮尒天下所知食
兼天皇之神之御言
能
大宮者此間等雖聞
大殿者此間等雖云
春草之茂生有霞立
春日之霧流
百礒城之大宮處見者 悲毛
玉のように美しい天智天皇が新しく住まわれるところが畝傍山橿原だと知らせねばならないさ。
天智天皇は世の人々が慕う水辺の師だった。
天智天皇が亡くなったのだから、代を継ぐ方々があの方の生前の功績を天下に知らせるべきさ。
天空いっぱいの倭人たちはそこに残し、近江国へ遷都の際に焼き尽くされた三輪山を越えていらっしゃる。
どちらへ行こうか、天智天皇がしばし考えていたが、空から降りて石の畑を歩かれる。
清らかな海の国の楽浪の大津宮にいらっしゃった方の生前の功績を天下に知らせよ。
同時にお言葉も知らせよ。
「睦まじく暮らせ」
大宮に人々の足音が続き、休まず「睦まじく暮らせ」と告げるようにし、宮殿に人々の足音が続き休まず「睦まじく暮らせ」と言っても大友皇子は仲睦まじくなかった。
その結果、宮殿は廃墟となり春の草が生い茂って、天智天皇の業績は春の太陽のように濃い霧の中に隠されている。
百礒城の大宮があったところを見るや旅人は悲しい。
万葉集の母 鸕野讚良 うねり継がれる皇統(万葉集28・29・31・32番歌) <続く> |