本書は、韓国文学の魅力とその核にあるテーマを、日本の読者に向けてわかりやすく解説した一冊だ。 斎藤真理子さんは韓国文学の翻訳家として、多くの作品を日本に紹介してきた第一人者。本書ではその豊富な経験をもとに、韓国文学の特徴や背景について多角的に論じている。
本書の大きな特徴は、単なる文学論にとどまらず、韓国の社会や歴史、文化に根ざした視点から文学を読み解いている点にある。
韓国の近現代史は、日本の植民地支配、6・25戦争、軍事独裁、民主化運動など激動の時代を経ており、それらの歴史が韓国文学にも色濃く反映されている。
また「女性」の視点として、韓国文学におけるフェミニズムの発展や、女性作家たちの活躍についても触れている。著者は、こうした歴史的・社会的背景を踏まえながら、テーマを整理し、読者が理解しやすい形で提示している。
韓国文学をより深く知りたいと考えている人にとって本書は格好の入門書であり、同時に韓国文学の奥深さを味わうためのガイドブックとなるに違いない。日本との比較を通じて新たな視点を得ることもできるだろう。
イースト・プレス刊
定価=1980円(税込)
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