韓国が独自に開発した中距離地対空ミサイル「天弓2」のイラクへの輸出が決まった。同ミサイルが輸出されるのは、アラブ首長国連邦とサウジアラビアに続き3カ国目となった▼尹錫悦政権は発足後、国家安全保障戦略で自国を「防衛産業大国」と位置づけ、輸出の拡大を図ってきた。防衛装備品の輸出額は、2021年の約72億5000万ドルから、24年は約200億ドルに達する見通しだ。また、兵器の輸出は販売だけでなく、その後のメンテナンスも含む長期契約となる▼輸出が好調な理由は、ロシアの脅威が顕在化しただけではない。性能・価格面などから見て最も優れた兵器が韓国製だったのである▼受注した兵器を現地生産にして雇用を創出するなど、柔軟性のある契約を採用していることも成功の要因の一つだろう。韓国の得意分野であるマーケティングの勝利ともいえる▼中東への輸出拡大は、緊迫する地域情勢の影響が大きい。高性能の中距離地対空ミサイルを生産できるのは米国、イスラエル、韓国などに限られる。米国はウクライナ戦争で、兵器を生産する余力がない。中東諸国はイスラエルから兵器を購入することはできない。韓国から兵器を輸入する以外に選択肢がない状況になっているともいえる▼一方で、さまざまなリスクもある。兵器を輸出するということは、ともすれば韓国自体が戦争に巻き込まれることもある。兵器産業が拡大すれば世界的安保の分野で存在感が高まるのは自明の理。相応の外交手腕も問われるといえよう。 |