韓国のTV朝鮮は11日、韓国政府当局者の話として、北韓当局が先週、中学生およそ30人を公開処刑したと報じた。
理由は、韓国から対北ビラの風船で一緒に飛ばされてきたUSBメモリを拾い、その中に収められていた韓国ドラマを見たためだというが、中学生30人を一気に処刑とは、にわかには信じがたい。金正恩氏が韓流に対する弾圧を強化し、公開処刑をおこなっていることは、脱北者の証言からも明らかだが、1週間の間に中学生30人を処刑とは前代未聞である。
TV朝鮮の報道はたった2分で具体性に欠けており、30人が一度に同じ場所で処刑されたのか、あるいは1週間の間に複数の場所で刑が執行されたのかすら言及されていない。仮に一度に同じ場所で30人を虐殺したのなら、さすがに家族や市民らは黙っていないだろう。北韓住民は体制に従順なだけのロボットではなく、心の中では自由を守っている人も多い。また、家族しかも子供なら命がけで守ろうとする。
TV朝鮮はこの件に関して、もっと具体的な情報を提示する責任がある。また韓国政府やTV朝鮮が「30人公開処刑」に関する客観的、またはそれに近い証拠を確保しているのなら、すぐさまユニセフや国連などの国際機関に訴え、世界に知らしめるべき案件である。続報がない限り、筆者としてはこの報道をどう見るべきか判断がつかない。
一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は17日、北韓当局が製作した韓流取り締まりの宣伝映像「反社会主義、非社会主義現象を根絶しよう」について報じた。このような宣伝映像は、これまでも複数、存在が確認されている。RFAは映像そのものを公開していないが、画面のキャプチャ画像や音声の内容を伝えている。筆者も確認したが、韓流を取り締まる「公開裁判」の様子が映されており、当局者の服装や公開裁判の雰囲気から北韓当局が製作した宣伝映像であると断言できる。
高校2年生5人(女子が4人、男子が1人)の氏名が写り、そのうち16歳の女子2人は顔がアップで映っている。咸鏡北道のある住民はRFAに対し、「(当局は)最近、毎週の定期講演会ごとに映像を見せている」と伝えた。RFAが記事とともに公開した宣伝映像の音声は「不純録画物を視聴、流布する行為は単に平安南北道だけではなく、ほとんどすべての地域で現れており…」という内容を伝えている。
これと関連して住民は「当局の強力な取り締まりにも住民が韓国など外国映画に関心が高い状況が平壌と全国的に現れている」と指摘。さらに、「当局は体制宣伝用の録画物を除く他国のすべての映画とドラマ(視聴・流布)を犯罪と規定した」とし、「人間らしい生活を表現した映画も韓国映画ならば無条件に犯罪になる」と伝えた。
北韓当局が「見せしめ映像」までを公開しているということは、今なお韓流コンテンツの非合法な流通の勢いが衰えていないことの反証と言える。 |