北韓のミサイル開発が加速している。日韓防衛当局は4月2日、北韓が東岸沖へ向けて中距離弾道ミサイルを発射したことを確認した。翌日、北韓国営の朝鮮中央通信は金正恩総書記の立ち会いの下、新型中・長距離極超音速ミサイル「火星16ナ」の発射実験が行われ、成功したと報じた。
金正恩氏は「異なる射程の全ての戦術、作戦、戦略級のミサイルの固体燃料化、弾頭操縦化、核兵器化を完全無欠に実現することによって、全地球圏内の任意の敵の対象物に対しても『迅速に、正確に、強力に』という党中央のミサイル戦力建設の3大原則を立派に貫徹することになった」と実験結果に満足したという。
極超音速ミサイルは、音速の5倍以上のスピードで低空を変則軌道で飛行することから既存のレーダーでは探知しにくく迎撃が困難だという点に加えて、北韓は腐敗しやすい液体燃料ではなく固体燃料のミサイルエンジンの開発にも既に成功したと主張している。
一方、火星16ナはまだ脅威ではないという見方もある。米政府系の自由アジア放送(RFA)によると、米ランド研究所軍事専門家のブルース・ベネット先任研究員が極超音速弾道ミサイルの速度・軌道は不明だが、米韓ミサイル防御体系であるパトリオットで迎撃可能だと述べた。ベネット氏によると、ロシアは極超音速ミサイル「キンジャール」をウクライナ戦で使用したが多くが迎撃され、同ミサイルの性能が疑問視されているという。北韓の火星16ナはキンジャールよりも性能が劣るため、迎撃可能だということだ。
韓国軍当局は今回の発射実験について「新型固体極超音速ミサイルの初の試験発射で開発初期段階ミサイルの飛行性能試験に重点を置いた」「極超音速ミサイルは米国、中国、ロシアなどの国々も開発している高難度の技術が要求される」「旋回飛行はしたが完璧な滑空までは追加試験が必要だ」と述べるなど、現時点では脅威ではないという見解が大勢だ。しかし、裏を返せば実戦配備するほどレベルアップすれば日米韓にとっては実に「厄介な飛び道具」になるということである。
金正恩氏は、もし戦争が起これば地上戦では勝ち目がないことを理解している。だからこそ、核兵器、長距離弾道ミサイル、軍事偵察衛星など、空中戦の戦力開発に力を注ぎ、その分野の技術を着々と進歩させてきた。
韓半島は戦争中ではないが、休戦状態であり終戦したわけではない。戦争において最もしてはならないのが「敵の過小評価」だ。少なくとも金正恩氏は現在の韓半島情勢を準戦争状態と捉え、日米韓を過小評価せず、脅威だと認識しているからこそミサイル開発に勤しんでいる。
「北韓には高度な兵器を製造する技術も資金もないだろうから、それほどの脅威にならない」という安易な過小評価で判断すべきではない。馬鹿な3代目独裁者のミサイル遊びと見くびっていると、核ミサイルをはじめとする「飛び道具」が実戦配備のレベルに達した段階で時すでに遅しとなりかねない。 |