筆者は2月10日、旧暦の正月を迎えてソウルを訪れ、同郷の弁護士、尹鶴氏が経営するアートセンターを訪問した。江南の最高裁判所前にあるアートセンターは、ギャラリーの他、500席と200席の公演場があり、BTS公演や趙容弼コンサートを開催したこともある。
尹鶴弁護士は作家、コラムニスト、月刊Reader出版、新聞を発行する文化芸術経営者でもある。尹氏はソウル大学法学部卒業後、司法試験に合格した俊才であり、尹錫悦大統領とは同じ宗氏である。
一時、ガンにかかり完治した体験から、東京銀座のアートセンターで健康講座やエッセイ講座など人生経験談を兼ねた教養講座を設けている。尹大統領が検事総長の時は「尹先輩、ガン完治の秘訣を教えて下さい」と尹弁護士の自宅を訪れたこともあった。
地方出身で学窓時代は自炊生活で苦労したが、今は富裕層の弁護士として、韓国の大手財閥の相続裁判や財閥2世の離婚訴訟、政治家同士の訴訟などさまざまな裁判に関わったので、生々しい体験談が興味深かった。特に、安哲秀を説得して大統領選候補を一本化させ、尹錫悦政権の誕生に決定的な舞台裏の役割を果たした方だ。お金と権力を追求せず、世の中に新しい白い波を起こす文化活動に専念する尹氏との懇談会で興味深い内容を一つ紹介したい。
「世の中は(財力を)持ってる富裕層はごくわずかで、ほとんどは持たない一般庶民層が多い。ずるい政治屋は持たない庶民層を唆して政権を握ると、権力濫用と不正蓄財に陥る共通点がある。特に、庶民層を抱き込もうとばら撒きで多額の国庫損失を招いている」―さまざまな政争訴訟経験に基づいた鋭い指摘が説得力を高めた。
ドイツの経済学者、カール・マルクスは「少数の資本家に富が独占される資本主義の矛盾を打破するために労働者が必然的に革命を起こし共産主義社会になる」と主張した。階級対立のない共同所有の共産主義社会になるということだ。しかし、共産党が支配する中国や北韓、旧ソ連は特権層と党幹部、新興富裕層が権力と富を独占する階級社会だ。結局、共産主義であれ、資本主義であれ、貧富の格差と階層対立は解消できないことが分かる。
ところが、ずるい政治屋たちは階層対立を焚きつけて政権を奪取し、自ら権力を独占し不正腐敗を犯すようになる。ちなみに最近、三星グループの李在鎔会長が経営権不法継承などの疑惑に関して無罪判決を受けた。
経済学者の友人曰く、「世界中どこの国(中共、北韓)も特権層・富裕層は約1%で、99%は庶民である。そのうち約26%は中産階層だ。政治屋が政権を握ると99%の庶民層から支持率を高めようと財閥・富裕層を弾圧する。持ってる者は羨望の対象でありながら、妬み・嫉妬の対象だからだ。つまり、持ってない大多数が抱える妬み・嫉妬心理を刺激して支持率を上昇させ、政権延長を演出する高度の政治工学、誤魔化しトリックであることが分かる」―でたらめ政権ほど、財閥改革の名目で大企業オーナーを弾圧、拘束した。
特に、文在寅の大韓航空、サムスン、ロッテオーナー拘束は、持つ者に対する庶民層の嫉妬と違和感を大幅に解消させてくれた。原子力発電の廃棄と防衛産業体である大韓航空の趙会長の死は、文政権が北韓の犬であり中共の操り人形であることを証明している。でたらめ政権の財閥弾圧は一石二鳥の効果をもたらす。
財閥を弾圧すると、政治献金の裏金が入ってくる。同時に、一般庶民層が富裕層に対して抱えている嫉妬心を満足させ、政権支持率の上昇をもたらしている。しかし、インターネット時代を生きる我々国民は頭が大きくなり、政治屋たちの甘いポピュリズムの誘いと誤魔化しトリックをすべて見抜いている。
政治屋の誤魔化しに騙されていくと国の財政破綻は勿論、妻子や家族が北韓の住民の如く犬、豚のように、奴隷になってしまうと言う事実を感じ取っていることは不幸中の幸いである。 |