韓国戦争勃発70年を迎える東アジアが、米中戦争の最大の戦略要衝である韓半島の休戦体制が揺らぐ激浪に陥っている。非核化を絶対受け入れられない金正恩は、文在寅政権との「民族共助」を放棄し、再選を準備中のトランプ大統領を相手に、核保有国の地位を勝ち取るための賭けに出た。金正恩が生死をかけた賭博に出たのは、文在寅が対北制裁を緩和させる能力も意志もないと判断したからだ。金正恩を決定的苦境に追い込んだのは、武漢ウイルスを防ぐために取った中国との国境封鎖措置だ。これが北韓経済の息の根を止めた。米国と国連の対北制裁よりも決定的な制裁を、自らが取ったのだ。
米、軍事行動なら年内決断が必要
昨年末から、「米国が自分たちの基準と時刻表を合わせなければ新しい道を行く」と公言してきた金正恩は結局、核保有国への「正面突破」戦略を選択した。これに向けて金正恩は元老級側近を整理し、猪突的な人物を前進配置した。
金与正が前面に出て対南圧迫、対米挑発を始めた。開城工団の南北共同連絡事務所を爆破したのは文在寅への不信と憎悪の爆発で、文在寅に対して韓米同盟の破棄を要求する最後通告だ。平壌の統戦部は21日、すべての南北合意を紙屑にすると談話を発表した。談話の文面通りなら、2018年の板門店宣言、平壌宣言、9・19南北軍事合意書の破棄を超え、板門店宣言の源である金大中・金正日の6・15共同宣言(00年)、盧武鉉・金正日の10・4宣言(07年)の破棄を意味する。つまり、南北関係は平昌五輪の前どころか、東西冷戦時代に戻る。
| E4Bナイトウォッチ。米軍に4機だけの核戦争の空中指揮機だ | 金正恩が文政権との関係を「敵対関係」に変えたのは、おそらくジョン・ボルトンの回顧録でも言及された”文在寅の人間性”に対する不信もあるようだ。
2年前は「道連れ」と言い、事実上の運命共同体を演出した金正恩と文在寅が別れるようになったのは、文在寅派の目標と金正恩・与正体制の目標が一致しなくなったことが考えられる。金正恩は体制存続のために、米国から核保有国の地位を認められることが最優先課題であるのに対し、文在寅は北の非核化には関心がなく、彼らが享受している巨大な利権と独裁体制の永続化が最優先になった。
つまり、金正恩にとって米国との関係改善が体制生存のカギであるのに対し、米国から離れようとする文政権は、米国の代わりに中国との密着を追求しているため、両者の立場が違ってきた。文在寅は中共と共謀した4月の総選挙で圧倒的な議席数を確保したが、平壌が欲しい措置を直ちにできるわけでもなく、内部葛藤の解決も困難な状況だ。
南北共同連絡事務所の爆破は、イメージ操作で支持勢力を結集させてきた文在寅集団にとって、彼らの破綻に繋がる。
文在寅は統一部長官の辞表を受理(19日)した。自らの失敗を認めない文政権が、仕方なく責任を認めたのだ。もちろん、そもそも文在寅自身が辞めねばならない。ジョン・ボルトンの回顧録も文在寅を強打した。彼の詐欺、偽の平和売りが明らかになった。
いずれにせよ北京を中心に武漢ウイルスが再拡大、そのため国境封鎖の解除も難しくなった平壌側は現在、切実な状況だ。南北関係を敵対関係に転換するだけでは不十分で、自分を無視している米国との正面対決を宣言した。党中央軍事委は5月23日、核武力を高度の激動態勢に維持するように強調し、外務省は「米国の脅威を管理するための力を育てること」が戦略的目標と宣言した。駐露北韓大使館は20日、米国を核兵器で消滅させると言明した。
米国は17年のときとは異なり、平壌側の挑発に言葉で応酬せず、北側を軍事的に制圧できる体制を整えることに注力している。
B52Hなどを西太平洋に出撃させ、米空軍を日本航空自衛隊が援護する訓練を見せている。核戦争の指揮機のE4Bの訓練まで公開(21日)した。
核空母のニミッツが20日、7艦隊に配属されるなど、韓半島の近海に核空母が3隻展開されている。米国は韓国軍なしでも、北核を破壊できると思われる。韓半島の周辺に展開した米国の戦略資産によって、米国は低威力の核兵器(B6112、W762)などの運用ができる。
北側が韓国軍に対する軍事的挑発を強調しても、軍事的に北側が優位に立つわけではない。北側が開城と金剛山地域をはじめ、全国をいくら要塞化しても、在来の軍事力は一瞬に破壊される。そもそも北側が非対称戦力として、核ミサイルの開発に集中したのは、在来の戦力で対抗できないためだ。何百万人を餓死させながら核ミサイルを完成したのではないか。
つまり、金正恩が韓米同盟、特に米国に対抗するためには、米本土を確実に攻撃できる核兵器が必要となる。平壌側としては急がねばならず、米国も年内に北核を無力化せねばならない。
平壌側は当面、対南・対米サイバー攻撃を試みると予想される。重大な対南軍事挑発は、戦時作戦統制権を韓米連合司令官に付与する望ましくない結果を招くからだ。平壌の偵察総局は昨年、国連安保理までサイバー攻撃を加えた。しかもサイバー攻撃は、統治資金が枯渇した金正恩に外貨をもたらす有力な方策でもある。 |