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最終更新日: 2020-02-19 00:00:00
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2020年01月16日 00:00
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韓国スローフード探訪26 薬食同源は風土とともに
冬の寒さと胃の疲れを癒すお粥・ソウル

 年末年始の長い休暇も明け2020年が始動した。年末の忘年会から新年会と何かと宴席が多く、ついつい食べすぎたり飲みすぎたりと胃への負担も多くなりがちだ。

小豆のお粥
 1999年の正月、ソウルに2週間滞在し5日間ほど宮廷韓定食について簡単な講座を受けた。その時に最も印象に残った料理が松の実粥である。その昔、王侯貴族が客をもてなす際、酒を酌み交わす前に、小振りの器で松の実粥を口にしてから酒を飲み悪酔いを防いだという。講座のあとに宮廷韓定食を味わった。松の実粥からスタートし次から次へと料理が運ばれてくる。最初は出されたものを全部いただくのが礼儀と思っていたが無理せず残しても良いと言われ、ホッとしたのを覚えている。
すべの料理が身体をいたわるような食材の組み合わせである。勿論、贅を尽くした食材ではあるのだが、王の日常の食事にお粥は欠かせないものであったとも教わった。韓国の薬食同源は、この時、お粥から学んだといっても過言ではない。種類の多さ、そして、日常的に食するという文化が韓国には長く根付いているのだ。ワクワクするような興味がわいてきた。「お粥を食べてみよう。そうだ、朝食はお粥。でも、昼まで大丈夫かな。ま、その時はコーヒータイムをすればいいか」。その当時、一人であれこれ考えながら滞在中のホテルから数分のところにあるお粥専門店へ向かった。メニューの中から小豆粥をいただいた。理由は特になかった。以来、ソウルは可能な限り、朝食はお粥というのが習慣になった。

 2019年も残りわずかとなった12月中旬、韓国料理を食べるために週末をソウルで過ごした。市内はクリスマスイルミネーション一色に包まれていた。いつもの年よりは暖かいと思ったのだが夕暮れになると刺すような冷たい空気に包まれた。ソウルの友人たちとは普段からラインでやり取りをしている。スマホ音痴なのだが使い方を伝授してもらい、こんな時は本当に助かっている。友人たちと合流し、食べて飲んで、話して、笑って、また飲んで。と、尽きることがない。楽しい時間を過ごし、爆睡した翌朝は通い慣れたお粥の店へ。朝7時40分。店内はお客さんでほぼ満席だ。少し待てば席は空くはず。店の人が空いたところへ座るようにと言うやいなや小豆粥がもう運ばれてきた。いつも注文しているから分かってもらっているのかと思っていたが、そうではなく冬至の小豆粥を食べる地元の人で満席だったのだ。店の人が小豆粥に水キムチ、白菜キムチやナムル、塩辛、などの小皿料理を乗せたトレーをテーブルに運んできた。ファッとしたほのかな甘い小豆の香りに引き込まれるように食べ始めた。まろやかな味と温かなスープ状のお粥がジワーッと身体に沁みてくる。箸休めのキムチや塩辛などをつまみ、ひたすらお粥をいただく。お粥と向き合った時間はまさに無の境地。器の底が見え出し、アッという間に5種類の小皿料理もお粥とともに完食。血行がよくなり、つま先までポカポカ。お腹も落ち着き、ゆったりとした気分になる。コートをしっかりと着て外へ出ようとした時、後ろから「いつ来たの」とおばさんが駆け寄ってきた。「また来て」と笑顔でコートの襟を直してくれる。温かい言葉がうれしい。小豆粥とおばさんの言葉でジワジワとエネルギーが緩やかに動き出し、何もかもが清々しく見えてくる。

 白粥、小豆粥をはじめ薬効効果が期待できる人参(高麗人参)粥、フダンソウ粥、芹粥、葵粥、ゴマ粥、ナツメ粥、松の実粥などなど。さらに補養効果の高いアワビ粥や牡蠣粥、鶏粥など数多くの種類がある韓国のお粥文化は、まだまだ発見されていないことが多いはず。20年の七草粥は韓国の芹粥をお手本にして作ってみた。
新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。

2020-01-16 5面
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