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2020年01月01日 00:00
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キスン便り<第8回>やられっぱなしの韓国

 中国を統一した隋(五八一~六一八年)は高句麗を四度にわたり攻めました(五九八~六一四年)。第二次攻撃は六一二年のことでした。このときは武器や食糧を運ぶ輜重部隊まで合わせて三百万という大軍で攻めて来ましたが、粉砕されました。乙支文徳将軍は平壌近くまで攻め込んできた六十万の大軍をほぼ全滅させるぐらい完膚なきまでに叩きつぶしました。隋はぼろ負けを喫したせいで、各地で反乱が起こり、やがて隋という国そのものが滅びてしまいます。韓国人はこの大勝利を讃えて大満足ですが、私は、どうして返す刀で高句麗に隣接する地域を取ってしまわなかったんだ、と感じます。普通は倍返しだろう、と思います。長安までは一千二百キロメートルぐらいあるからさすがに無理かも知れないけれど、河北省、山東省辺りは取れただろうに、と思います。なぜ中国の北部を支配できるチャンスをみすみす見逃したのか? これが分かりませんでした。
満州族は朝鮮族と元は同じでした。厳密には違っていたのでしょうが、中国人からは同じ民族として括られていました。漢書という歴史書に粛慎という名で記録された民族がそれで、粛慎の北の寒い地域に住んでいたのが後の満州族になります。これより南の中国の隣りにいて、やがて半島内に潜り込むのが朝鮮族です。満州族は金(一一一五年)と清(一六一六年)という世界帝国を二度建国します。しかし朝鮮族の方はやられっぱなしです。この違いは一体何なんだと疑問でしたが、長い間分からないままでした。
ある時ひょんなことからこの疑問は氷解します。ある年のことでした。私は仕事でモンゴルのウランバートルに行きました。パオのホテルにも泊まりました。料理のメインは羊です。ゆでた肉をナイフで切って、岩塩をつけて食べます。なかなかにうまかったです。しかしこれが毎回、毎食続くとやめてくれ、と言いたくなります。野菜は、ロシア式だと思いますが、人参とタマネギの酢漬けぐらいしかありません。バター茶というのは、煉瓦のようにかちかちに固めた茶葉をナイフで削って作ります。茶葉のブロックには小石や藁屑が混じっています。茶それ自体の質も悪く、香りも殆どありません。水分補給とビタミンCの補給という知識がないと、飲む気になれないぐらいの飲み物です。馬乳酒というのも飲んでみましたが、酢にアルコールを溶かしたような飲み物です。一日中、馬を駆り喉がからからならばうまいに違いありません。しかし大して汗も流してない自分には酸っぱいだけの飲み物でしかありませんでした。そんな食生活を三日も続けると、食べるものがありません。そんな時、ふと思ったものです。
「こりゃ、隣りに酒がうまくて奇麗なねえちゃんが居る国があれば命がけで攻めるわ」と。高句麗や高麗、朝鮮は食が豊富で奇麗なねえちゃんも居れば、酒もうまかったのです。それで他人の食料や女を奪うために命をかける必要がなかったのでした。食料生産力が高かった、というのが、朝鮮族が他国を攻めなかった原因であるに違いない、と考えました。別に礼節を重んじて他国を侵略しなかったわけではないのです。飯がうまかった。だから常に攻められる側でそれを守り切ると、こちらから攻める必然性がなかった、ということだったのです。満州族は寒くて食料の乏しい地域にいたから、他国を侵略して奪う以外に生きる道がなかったのです。
こうしたことから朝鮮族は半島に閉じ籠もり、五〇〇年間も引き籠もりを続けた挙げ句、日本に支配されることになりました。この事実を見て韓国人は、自分たちは礼節を重んじる民族だから他国を侵略せず、日本人は礼節を欠く民族だから自分たちを植民地化したと考えます。さて、この判断はどうなんでしょうね。
李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。

2020-01-01 14面
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