朝総連機関紙の朝鮮新報は2月27日付の1面と2面に、マレーシア側の不当な態度を断罪、「南朝鮮当局が台本を作った陰謀策動」という朝鮮法律家委員会のスポークスマン談話(2月22日)を掲載した。平壌側は先月の2月13日、マレーシアで共和国の公民が突然ショック状態に陥って病院へ運ばれる途中、死亡したが、マレーシア当局が南朝鮮保守言論らの「北の仕業説」を流布させたことを契機に遺体に剖検を強行したと非難した。
平壌側は、マレーシア側の不当な行為(司法解剖)が、南朝鮮当局が展開する反共和国謀略騒動と時を同じくしていることから、南朝鮮当局が今回の事件を事前に予見し、そのシナリオまで予め用意していたことを示すと詭弁を並べた。完全犯罪を図った平壌側は困惑したはずだ。金元弘など首脳部が処刑・粛清されて混乱している国保衛が関与したためなのか、金正男が毒殺されてから9日後に「談話」を発表し、朝総連は平壌で発表があってから5日後、朝鮮新報に談話を掲載した。
本当に不自然なことだ。死亡した者の名前も公開せず、外交官旅券を所持したという者の身分も写真も公開していない。葬儀を行う家族の身分も発表しないのはなぜか。脱北者の場合は拉致されたと家族が騒いだのではないか。
写真も公開できない理由は、もし「キム・チョル」という者の写真を公開したとき、彼が2001年5月1日、偽造ドミニカ旅券を所持し、家族を連れて成田空港から入国しようとして逮捕・追放されたパン・シオン(Pang Xiong)という人物と同一人物であることが露見することを恐れたからか。このパン・シオンは金正男で、敵国に逮捕されたという不名誉により後継者レースから除外されたことが人民に知られてはならないためか。
マレーシア当局が遺体から確認した毒は、国際的に使用が禁止されているVXであることが分かった。金正男は化学兵器の攻撃を受けたのだ。北側が司法解剖に反対し、遺体の引き渡しを強く求めた理由は、この秘密を守るためなのだ。他国で、それも公共の場所で化学兵器を使用したのは、単なるテロではなく戦争行為だ。張成澤を処刑した国家保衛部が、金正男暗殺作戦にかかわっていたことも明らかになった。
韓国国防部は、VXを実戦でより効率的に使うために開発したVX‐2を、北側が大量に配備していると確認した。VX‐2は、ノドンに装着すると、日本全土を攻撃できる。北側がミサイル開発に狂奔するのは、核弾頭だけでなく、化学兵器や生物兵器も運搬できるからだ。朝総連は、固体燃料ミサイルの「北極星‐2」の発射成功を喜んでいる。
韓国社会が北側のテロに敏感に反応するのは当然だ。今まで平壌側は対南工作員などの特殊要員を韓国に派遣して「裏切り者」を暗殺した。これまで韓国に浸透した工作員たちは、自殺用の劇薬を所持している。日本人を北に拉致した辛光洙が1985年、原敕晁さんになりすまして日本のパスポートで韓国に入国した時も、自殺用の毒を持っていた。ソウル五輪を妨害するため大韓航空機を空中爆破した金賢姫も、脱出に失敗するや毒を飲んだ。
北韓へ行って特殊教育を受けた朝総連学習組員たちの中には、首領の権威と秘密を守るため「自爆精神」を叩きこまれた者が少なくないはずだ。許宗萬など朝総連の幹部は、金日成の孫である「白頭血統」の金正男が異母弟の指令で暗殺されたことを知られないようにするためなのか、あるいは自分たちがいつ殺されるかわからないという恐怖からか、金正日の誕生日の祝賀を名分に、首領への忠誠を大々的に誓っている。
金正恩は朝総連を信頼し、寛大に対するだろうか。金氏王朝の歴史は粛清の歴史、処刑の歴史だ。金日成と金正日は、反共大統領だった李承晩はもちろん、朴正熙と全斗煥の暗殺も試みた。金正恩は金日成や金正日よりもはるかに暴悪だ。
今回の金正男暗殺はどうせ北韓住民に知られる。そして、どうせいつでも金正恩に殺されるなら、金正恩を除去しようと思うようになる。
北韓住民はみな知っている。開放すればいい暮らしができることを。公に言えないだけだ。朝総連は、北韓住民のこの切実な願いを無視し、金正恩の手先になっている。北韓住民から見れば、朝総連こそ金正恩の親衛隊だ。自由な日本に住みながら「光明星節」を祝うため、在日朝鮮人芸術団を平壌に送り、「太陽の懐へ、ああ、行きたい」などを公演するのだから。 (つづく) |