突然「?」とだけ書かれた手紙が送られてきたらどう思うだろうか。フランスの作家、ヴィクトル・ユゴーがその送り主、との逸話がある。代表作「レ・ミゼラブル」の売れ行きを気にして、バカンス先から出版社に送ったものだと伝えられている▼手紙ではなく電報だったとの説もある。当時は高価だった電報をいかに少ない字数で送るか。悩んだ末の「?」だったとしたら、ひげを蓄えた渋い顔に手を当てたこの文豪のイメージも多少変わってこよう▼時はそれから150年以上たった現在、通信手段は多様化し、進化する。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)はその最たるものだ。不特定多数、あるいは友人・知人に、瞬時に写真や情報を伝えられる▼それを読んだ人は、思い思いに感想を書き込む。より簡潔に、親指を立てた「いいね!」ボタンを押せば、同意を示すこともできる▼この「いいね!」で有名なフェイスブックは14日、日本語版に「いいね!」以外の表現を追加した。「超いいね!」、「すごいね」、「悲しいね」など5種類。人づきあいにおけるネット利用の重みが増した現代、「いいね!」を押すにも一呼吸置いてしまうという人は多かろう▼ユゴーの話に戻る。「?」と聞かれた出版社は「!」と返した。「ものすごい売れ行きです」という意味だ。紆余曲折を経て、亡命先で完成させた大作の反響を待つ文豪は、この粋な返事に何を思ったか。きっと今なら、このやりとりに「超いいね!」がたくさんつくだろう。 |