今回の国連総会では北韓の問題が異例なほど大きく取り上げられた。北韓の人権問題をテーマにした高官位級会議(9月23日、韓日米外務長官ら参加)は、初めてのことだった。
会議を主導した米国の意図は明確で適切だった。文明社会が加えられる圧力の中で最も強力な文明的基準と手段が、まさに人権だ。
平壌は韓国が提案した「北韓人権対話」を拒否した。十分予想された反応だ。平壌の態度は、分断69年を通じて十分わかっている。
国連人権理事会が今年3月にまとめた北韓人権調査報告書は、金正恩を国際刑事裁判所に付託することを安保理に建議した。もちろん、中国とロシアは同報告書の討議を拒否した。安全保障理事会で北韓人権報告書を処理できなかったため、北韓人権高位級会議を経て総会に報告し、決議案を採択しようとしたものだ。
朴大統領は、総会基調演説を通じて北韓人権と核問題を取り上げた。ところが、朴大統領の言及は、内容と表現の両方で非常に不十分だといわざるをえない。朴大統領が20世紀の国際社会の悲劇として挙げた地域や国(シリア、ルワンダ、南スーダン、旧ユーゴ)は確かに悲劇だった。しかし、20世紀の悲劇は中東とアフリカだけでなく、暴圧体制がある国々ではどこでも発生した。
アジアでも、特に共産独裁体制で惨事があった。中国、ソ連、カンボジア、ベトナムだ。文化大革命、カンボジアのキリングフィールド、ベトナムのボートピープルなどはいうまでもなく、わずか20年前の北韓では300万人近くの大量餓死が発生し、その余波は、現在進行形で続いている。
北韓は兵士の入営基準を142センチに引き下げたが、それでも長期化した栄養不良状態で19世紀末よりも平均身長が低くなったため、不足した兵員確保に必死だ。全国民の5%、つまり韓国軍兵力の2倍近い現役兵力を維持するため、女性にも兵役義務化を検討中という報道も出ている。
このような状況に対する切迫感が、朴大統領の演説からは感じられなかった。韓半島問題の当事者として、われわれの生存と未来がかかった問題を、朴大統領は第三者や評論家のように言及した。共産独裁体制に起因した惨事に対しては、意識的に言及しなかったようだ。
この大統領の演説と姿勢が大韓民国全体の雰囲気を反映したものなら誠に憂慮すべきだ。
北韓核問題や人権問題に対しても、当事者である韓国の覚悟と姿勢が足らず、国際社会の協力を呼びかけるのが主だった。当事者が命をかけるべき問題を、国際社会の誰がどう助けるのか。国連は韓国の建国には寄与したが、6・25戦争のとき韓国を救ったのは米国だった。
当面、北韓人権調査報告書に対して安保理は対処しない。10年以上かかった6カ国協議はどういう状況か。国際社会が深刻な紛争を平和的に解決した例はあったか。
朴大統領は、米国をはじめ、先進国が北韓人権関連の圧力を加えようとする場面で、北韓への毅然とした意志と具体的方策を示さず、逆に非武装地帯内の「世界生態平和公園」など南北協力を言及した。国際社会の現実は、国連安保理が機能しないから、対テロ戦争も有志国連合でやっている。こういう現実を無視し、自国の生存問題を国際社会に訴えるのは恥ずかしい。国家安保のためなら、国際社会の反対と非難、抵抗があってもやる必要がある。
未来への拡大再生産にほぼ寄与しない福祉には巨額を費やしながら、生存している国軍捕虜と韓国人拉致被害者救出には冷淡だ。北韓の核ミサイル実戦配備が秒読みになっても独自の抑止力などの対策を講じず、同盟と国際社会に頼っている。その一方で、テロとの戦争には寄与していない。
国会を「植物化」させた国会法も改正せず、問題のある教科書も直さず、スパイも処罰できず、反国家団体と利敵団体も解散できず、どうして平和統一など望めよう。国民も政府も、責任と義務という常識に戻ろう。 |